開門差止を求める漁業者も多くいること
諫早湾が締め切られた頃の有明海と諫早湾干拓事業の完成
諫早湾干拓事業では、諫早湾を締め切ることで漁場の消滅および魚介類の生育への影響を想定した漁業補償が行われた後、潮受堤防を建設する工事の中で平成9年に諫早湾が締め切られました。諫早湾干拓事業の漁業補償[PDFファイル/242KB]
諫早湾が締め切られた頃の有明海の漁業は、貝類は諫早湾の締切り以前から漁獲量の減少が続き、ノリについては平成12年に記録的な不作が発生する等の課題が生じていました。ただし、ノリの生産量は平成12年の不作後、比較的高い水準で推移しています。
一方、平成11年度の潮受堤防の完成、平成19年度の諫早湾干拓事業の完了によって地元の住民、農業者の方々は潮受堤防による防災効果を享受することができるようになり、新たに造成された新干拓地では入植した農業者によって新たな営農が開始しました。また、諫早湾内では現在、新たな漁場環境にあわせたカキ、アサリの養殖も定着してきています。
排水門の開門を巡る裁判
諫早湾干拓事業に係る裁判では、潮受堤防の排水門を巡って開門と非開門の対立の構図になりますが、それはそのまま農業者と漁業者の対立というわけではありません。
確かに、漁業者の方々の中には開門によって「有明海の再生」や「有明海の環境変化の原因究明」ができるのではないかと考えて、国を相手に開門を求める訴訟を起こし、平成22年12月6日に福岡高裁において国に対し5年間にわたり排水門を常時開放することを命じる判決が言い渡され、国は最高裁へ上告せずに判決が確定しました。ただし、この判決は国が請求異議訴訟を起こし、令和5年3月の最高裁決定により、執行力を排除する判決が確定しています。
一方で、諫早湾干拓事業の防災と営農の効果が発揮され、諫早湾で新たな漁業も営まれるようになっていた中、開門されることとなれば、地元の方々の安全・安心な生活と農業、漁業を営むための基盤が損なわれることとなります。このため、地元の方々はそれぞれの生活や仕事を守るため、やむを得ず、平成23年4月19日に国を相手に開門の差止めを求める訴訟を起こしました。この訴訟の原告には多くの漁業者も含まれています。
そして、この開門の差止めを求める訴訟は平成29年4月17日に長崎地方裁判所において国に対し開門差止めの判決を命じる判決が言い渡され、令和元年6月26日の最高裁決定により確定しています。また、その後に続いた開門を求める各裁判では開門を認めない判決が続いています。
このように排水門の開門問題は、現在は開門しない方向で司法判断が統一されていますが、地元漁業者の多くも開門の差止めを求めて訴訟に参加しており、「漁業者と農業者が対立」という単純な構図ではないと言えます。
長崎県、地元が国へ求めること
諫早湾干拓事業によって地域の防災機能が発揮され、新干拓地における新たな農業が営まれるようになったとともに、旧干拓地では野菜等の栽培も進み、諫早湾内でも新たな環境に合わせた漁業が定着する中、今後は有明海の再生に向けて漁業者並びに関係団体と連携した取り組みを展開していくことが必要だと考えられます。
そのため、国においては、令和5年の農林水産大臣談話を踏まえ、有明海の漁業不振の原因究明を進めるとともに、海域特性に応じた効果的な水産振興策や環境改善対策を実施し、真の有明海再生を目指していただきたいと考えています。
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