Q.潮受堤防の排水門を開門するとどのような影響がありますか?

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開門調査を行う場合の環境影響評価

 平成22年12月の開門請求訴訟の判決によって開門の義務を負った国は、平成24年に調査として排水門を開門した場合の環境影響評価(以下「環境アセスメント」言います。)をとりまとめています。

 平成24年に行われた環境アセスメントでは、開門調査の方法として次の4つのケースを設定し、それぞれのケースについて環境への影響が評価されています。

  •  (ケース1)調整池の水位や排水門からの排水の流速の制限をせずに、排水門をはじめから全開する方法
  •  (ケース2)調整池への海水導入量や調整池からの排水量を段階的に増加させ、最終的には排水門を全開する方法
  •  (ケース3-1)調整池の水位や排水門からの排水の流速を制限した開門方法(調整池の水位はマイナス0.5からマイナス1.2メートルで管理)
  •  (ケース3-2)調整池の水位や排水門からの排水の流速を制限した開門方法(調整池の水位はマイナス1.0からマイナス1.2メートルで管理)

開門の方法[PDFファイル/364KB]

 なお、環境アセスメント以前には、平成14年4月から5月までの約1カ月間海水を導入し、開門調査(以下「短期開門調査」と言います。)が行われており、その結果は、専門家による開門総合調査検討会議において平成15年に短期開門調査の結果がとりまとめられていますが、短期開門調査を行ったときは、諫早湾干拓地背後の旧干拓地の農業用水源に塩水が浸入したり、調整池内の大量の淡水魚介類と海域のアサリ等が斃死するなど、諫早湾周辺地域では大きな被害や影響が生じ、海水を導入した調整池等が再び淡水化するまでに約半年を要しました。

開門した場合の環境への影響

 環境アセスメントで設定された開門ケースのうち、最も環境への影響が少ないと評価されているケース3-2の開門方法は、平成14年に行われた短期開門調査と同じ方法になります。しかしながら、その短期開門調査では、潮受堤防の締め切りによる海域への影響は、ほぼ諫早湾内に止まり、諫早湾外の有明海全体にはほとんど影響がないとの結論が既に示されています。短期開門調査[PDFファイル/118KB]

 また、調整池が海水化すれば諫早湾干拓地背後の旧干拓地からの排水は海水が遡上しないように流し出す必要が生じるとも示されており、諫早湾干拓事業の防災効果が発揮されている現時点においては、開門すれば地域の方々による旧干拓地の排水操作の負担が増すことも危惧されます。開門の問題点

 はじめから排水門を全開するケース1の方法では、防災、農業、漁業の面で影響、被害が大きいため、開門で生じる被害を回避する対策が必要とされています。しかしながら、その対策の検討は、現に諫早湾干拓が有する防災機能の水準を引き下げて行われているだけでなく、被害回避の対策を実施するだけで1000億円を超える費用が必要であることがわかっています。また、仮に事前の対策を行ったとしても、全ての影響や被害を完全に回避することができるわけではありません。

  ケース2の方法は、ケース3-2からケース1に段階的に移行していく方法であり、最終的には排水門を全開することとなるため、結局はケース1と同様の影響や被害が想定されます。

 このように排水門を開門した場合、既に発揮されている諫早湾干拓の防災機能が損なわれることになるばかりか、調整池が海水になって諫早湾干拓農地とその背後にある旧干拓地の農業用水源が失われ、更には農作物に対する塩害や潮風害の発生も懸念されることや、海でもカキ養殖等の諫早湾内の漁業に被害を与えることが想定され、地域住民の安全安心な生活、諫早湾周辺地域の農業、漁業に大きな影響、被害が出るおそれがあると言えます。

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