諫早湾干拓事業以前の状況~干潟の発達と干拓~
福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県にぐるりと囲まれた有明海には筑後川をはじめとする幾つもの河川がそそぎこみ、それらの河川は山から土砂や火山灰を有明海に運んできます。また、有明海は日本一といわれる6メートルにもなる大きな潮の満ち引きがあり、川から運ばれ海にただよう砂や泥は、大きな潮の満ち引きの作用で海岸線に広く堆積して干潟を形成します。
有明海の恒常的な潮の流れは反時計回りで、有明海の西部に位置する諫早湾でも有明海の奥から運ばれる砂や泥によって干潟が形成されています。干潟として堆積した泥を潟土(ガタ土)と呼び、ガタ土は多いところで1年に5センチメートル以上も堆積します。このような年々干潟が発達するという有明海の特性を活かして沿岸の地域では、古くから幾たびも干拓を繰り返して水田が拓かれてきました。
干拓は潮が引いたときに現れる土地を干し上げて陸地とするものであるため、干拓によってできた土地は満潮のときの海水面よりも低い土地になります。したがって、満潮のときは当然に排水ができず、干拓地の前にガタ土が更に堆積すると干拓地の排水は海への出口をふさがれて排水がますます困難になり、海に流すためは干潟にミオ筋と呼ばれる水の流れみちが必要であり、たびたび作らなければなりませんでした。
このように干拓地に住む人たちは、雨が降ればたびたび湛水被害が発生する苦悩と、ミオ筋を掘削するという大きな苦労を抱えていました。諫早湾周辺地域の特性[PDFファイル/161KB]
そして、いよいよミオ筋を作るのが困難になるほど干潟が発達してくると更に干拓によって水田を拓き、新しい干拓地ができると背後の旧い干拓地は干潟で排水の出口をふさがれなくなり、排水がスムーズに流れるようになります。食糧増産のための水田の開発だけでなく、このような旧い干拓地の排水を改善することが諫早湾を含む有明海の沿岸で繰り返し行われてきた理由でもあります。
干拓が繰り返されてきた結果、諫早湾の周囲には約3,500ヘクタールにおよぶ長崎県最大の平野が広がっており、干拓とともに干拓地の方々の暮らしも発展してきました。
諫早湾干拓事業
諫早湾干拓事業は、土地や水等の資源に乏しい長崎県において、はじめは戦後に食糧増産等を目指して構想されましたが、その後「ガタ土堆積・災害・水不足の解消」と「農業振興」の2つの目的を一貫して実現しようとしてきました。その後も用水源を備えた優良農地を造成し、大雨や台風によって洪水や高潮の被害がしばしば生じていた旧干拓地である諫早湾周辺地域の防災機能の強化を図るため、国や市町とともに事業化を推進し、昭和61年に着工に至りました。
諫早湾干拓事業では、672ヘクタールもの畑地が造成され、平地が少ない長崎県において大規模で効率的な営農を可能とする貴重な農地であり、青果物だけでなく加工業務用野菜の生産も大規模に行われ、全国的にも有数な産地になっています。諫早湾干拓事業による優良農地の造成[PDFファイル/1MB]
また旧干拓地においても、諫早湾干拓事業によって排水不良が改善するだけでなく、調整池が淡水化して塩害や潮風害の心配もなくなったため、ブロッコリー等の園芸品目や大豆の作付け面積が拡大し、いちごやミニトマト等を栽培するビニルハウスも増える等、水田の畑利用が進んでいます。背後地の営農状況[PDFファイル/140KB]
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