平成24年地価調査の概要長崎県は、基準地の平成24年7月1日現在の標準価格の判定を行い、その結果を9月20日付け県公報で告示しました。
地価調査は、国土利用計画法施行令第9条に基づき、県が毎年1回、基準地の標準価格を判定するもので、不動産鑑定士の鑑定結果を審査調整し、国との協議を経て定めたものです。
本調査の目的は、国土利用計画法による土地取引の規制の円滑な運用を図るとともに、地価公示制度とあわせて一般の土地取引に対して適切な指標を提供し、適正な地価の形成に寄与する役割を果たすものです。
県下の地価は全用途の対前年平均変動率(注1)がマイナス3.8パーセントで、前年のマイナス4.3パーセントに比較すると0.5ポイント下落率が縮小しています。
ここ3年間続いた下落率横ばいの状況からはやや回復しているものの、地価動向は依然として下落傾向が続いています。
1住宅地の概要
(1)県全体の地価動向
住宅地の対前年平均変動率はマイナス3.7パーセントで、ここ3年間続いた下落率横ばいの状況からはやや回復しているものの、依然として下落傾向が続いています。平成11年に対前年平均変動率がマイナスに転じて以来、14年連続でマイナスとなっています。また、下落率が拡大したのは、五島市・南島原市・佐々町の2市1町で、他の市町の下落率は横ばいか縮小しています。なお、下落率が縮小した市町の中でも、県全体の平均変動率マイナス3.7パーセントよりも高い下落率を示している市町もあります。
(2)長崎市の地価動向
下落率はやや縮小(マイナス3.8パーセントからマイナス3.2パーセント)。高価格帯の住宅地は根強い需要等により下げ止まり傾向にあります。一方、郊外型住宅団地は、供給過剰傾向に歯止めがかからず、引き続き下落傾向にあります。また、斜面地に広がる階段道路沿いの住宅地は、高齢化と若年層の流出等により空洞化現象に歯止めがかからず、依然として下落が続いています。結果的に、平坦地の少ない実情を反映し、地域間格差が広がっています。
(3)主要都市の地価動向
佐世保市は、下落率はやや縮小(マイナス4.8パーセントからマイナス4.1パーセント)西九州自動車道の延伸等により、利便性が向上した地域の住宅地は、需要の回復の兆しが見られます。一方、斜面地の住宅地は、分譲住宅地や市街地の分譲マンション等との競合により、需要は弱く依然として下落が続いています。
諫早市は、下落率はやや縮小(マイナス4.3パーセントからマイナス3.7パーセント)。大型住宅団地の販売が完了し需給バランスは改善方向にありましたが、新たな大型住宅団地の販売が予定されており、供給過剰傾向が懸念されます。
(4)住宅地の変動率が最高の基準地は、次の6地点が0.0パーセントです。
ア長崎市泉1丁目「長崎の5」
要因は、希少性がある住宅地で供給が少なく、需要が堅調で底値水準にあるものと思われます。
イ長崎市宝栄町「長崎の6」
要因は、利便性が良く需要が安定的であるものと思われます。
ウ長崎市岡町「長崎の12」
要因は、高価格帯の住宅地は供給が少なく、需要が安定的であるものと思われます。
エ長崎市上西山町「長崎の18」
要因は、良好な居住環境を維持しており、供給不足と相まって需要が高いものと思われます。
オ雲仙市愛野町「雲仙の10」
要因は、島原半島の付け根部分という地理的優位性から、人口流入が進んでいることによると思われます。
カ南島原市布津町「南島原の21」
要因は、既に底値圏域にあるものと思われます。
(5)住宅地の下落率最大の基準地は、新上五島町奈良尾郷「新上五島の16」のマイナス8.3パーセントです。要因は、人口減少・高齢化などにより需要が減退していることによるものと思われます。
(6)住宅地の最高価格の基準地は、平成元年から24年連続で長崎市上西山町「長崎の18」の1平方メートル当たり163,000円(前年は1平方メートル当たり163,000円)で、前年と同額です。
(7)住宅地の市町別の平均変動率は、すべての市町においてマイナスで、市部の平均変動率はマイナス3.5パーセント、郡部ではマイナス4.4パーセントとなっています。
2商業地の概要
(1)県全体の地価動向
下落率はやや縮小(マイナス4.5パーセントからマイナス4.0パーセント)。平成5年に対前年平均変動率がマイナスに転じて以来、20年連続でマイナスとなっています。また、下落率が拡大したのは、諫早市・壱岐市・五島市・南島原市・東彼杵町の4市1町で、他の市町の下落率は縮小しています。なお、下落率が縮小した市町の中でも、県全体の平均変動率マイナス4.0パーセントよりも高い下落率を示している市町もあります。
(2)長崎市の地価動向
県内随一の繁華性と店舗集積性を誇る浜町アーケードにおいては、博多大丸長崎店の跡地の開発計画表明等により、活況を呈しつつあり下落率が縮小(マイナス6.0パーセントからマイナス3.7パーセント)しました。中価格帯では相対的割安感により下落率が縮小傾向にあります。また、全体としても下落率が縮小(マイナス2.6パーセントからマイナス1.7パーセント)しました。
(3)主要都市の地価動向
佐世保市は、マイナス5.6パーセントからマイナス4.9パーセントへ下落率が縮小しました。JR佐世保駅周辺の再開発の事業予定者が決定する等、規模が大きい商業地の需要に回復傾向が見られますが、中心商業地の需要は低迷しており、地価は下落傾向にあります。
諫早市・大村市・島原市の中心部商業地(アーケード街)は、郊外型店舗等への顧客の流出による影響が大きく、依然として下落傾向にあります。
(4)商業地の最高変動率の基準地は、次の5地点が0.0パーセントで同率です。
ア長崎市魚の町「長崎5の4」
要因は、マンション需要地として割安感があるものと思われます。
イ長崎市岩川町「長崎5の9」
要因は、マンション需要を中心として、価格は安定しているものと思われます。
ウ長崎市恵美須町「長崎5の-14」
要因は、マンション需要を中心として、価格は安定しているものと思われます。
エ長崎市出島町「長崎5の16」
要因は、マンションを中心に需要が堅調で、高値取引も見られるなど、底値水準にあるものと思われます。
オ南島原市北有馬町「南島原5の4」
要因は、周辺街路の整備が進捗したことによるものと思われます。
(5)商業地の下落率最大の基準地は、新上五島町奈良尾郷「新上五島5の3」のマイナス9.4パーセントです。要因は、人口減少・高齢化などにより需要が減退していることによるものと思われます。
(6)商業地の最高価格の基準地は、平成9年から16年連続で長崎市浜町「長崎5の20」の1平方メートル当たり942,000円(前年は1平方メートル当たり978,000円)です。
(7)商業地の市町別の平均変動率は、全ての市町においてマイナスで、市部の平均変動率はマイナス3.7パーセント、郡部ではマイナス6.2パーセントとなっています。
(注1)
変 動 率=(当年価格マイナス前年価格)÷前年価格×100
平均変動率=変動率の和÷継続地点数