長崎県における気候変動の影響(主要7分野)

 ここでは、気候変動の影響が既に生じている又はその恐れがある主要な7つの分野について紹介するとともに、長崎県において、特に影響の大きいと考えられる3分野(☆マーク)について、より詳しく紹介しています。

【主要7分野への影響】

  1. 農業、森林・林業、水産業(☆)

    高温、多雨等による農作物の収量や品質低下、家畜の夏バテによる飼料摂取量の低下、海水温の変化による磯焼けや赤潮の多発等

  2. 水環境・水資源

    気温上昇に伴う水温上昇に起因する水質悪化、短期集中豪雨の頻発等による水質悪化の懸念
    降雨量の変動幅の増加による安定的な水資源の確保困難の懸念

  3. 自然生態系

    海洋環境の変動による魚種や漁場の変化の可能性
    冬季における赤潮の確認等

  4. 自然災害・沿岸域(☆)

    異常気象による土砂災害等の発生、頻発化、激甚化
    潮位上昇や台風の大型化による被害の増加

  5. 健康(☆)

    気温上昇による熱中症救急搬送車数の増加
    外来種の蚊による未知の感染症の発生の懸念

  6. 産業・経済活動

    風水害による観光客への影響や、海面水位上昇に伴う砂浜消失による観光資源への影響

  7. 県民生活・都市生活

    豪雨による浸水被害や停電等によるインフラへの影響
    気温上昇による都市部のヒートアイランド現象の増大による快適性の損失等

農業、森林・林業、水産業

ここでは食生活に直結する農産物、水産物への影響の一部を紹介します。

コメへの影響について

水稲は高温や多雨等により生育障害や品質低下などの影響が出ることが知られています。
代表的な症状としては、白未熟粒(デンプンの蓄積が不十分なため、白く濁って見える米粒)や胴割粒(米粒が割れてしまう症状)などがあります。

写真(右)は高温障害の影響を受けたヒノヒカリ。
正常なコメ(左)と比較すると白く濁っていることが分かります。

果実への影響について

夏から秋にかけての気温が高くなり、日焼け果や浮き皮果(果皮と果肉が分離する現象で品質低下をもたらす。)等の果皮障害が起きています。

温州みかんの日焼け果(県農林部提供)

温州みかんの浮き皮果(写真中の左。右は正常果。)
(県農林部提供)

水産物への影響について

本県の周辺海域である東シナ海北部の年平均海水温は、100年あたり1.25℃の割合で上昇しています。
海水温上昇により、藻場の種類や形成時期、磯焼けが拡大傾向にあります。
また、近年は熱帯から亜熱帯にかけて生息し貝類を専食するエイの発生により、有明海などに生息する二枚貝に対する被害が発生しています。

写真は貝類を専食するナルトビエイの駆除の状況です。(県水産部提供)

自然災害・沿岸域

近年、集中的豪雨、線状降水帯といった言葉を耳にする機会が増えてきています。
大雨が発生すると地盤の緩みなどにより、土砂災害が発生する可能性が高まりますが、ここ10年ほどで、土砂災害発生件数は増加傾向にあります。今後、気候変動の影響で大雨や大型台風などにより、災害の頻発化が懸念されます。

画像5 100mm以上日数
長崎県内の土砂災害発生件数と日降水量100mm以上日数の年推移

令和2年7月には、記録的豪雨により大村市内の河川堤防の一部が決壊したほか、漁港の浸水被害等が発生しています。

河川堤防の一部が決壊した様子(写真は県土木部提供)

健康

長崎県において影響の大きい3分野の最後として「健康」に関する内容を紹介します。

熱中症、感染症

長崎県の年平均気温は、100年あたり最大1.5℃上昇しており、日本の年平均気温の上昇割合(1.35℃)よりも大きくなっている状況です。
このような中、熱中症による救急搬送者数も増加傾向にあり、今後さらに搬送者数が増加することが予想されています。
また、気温の上昇により従来日本に生息していない蚊を媒介とした新たな感染症の発生等も懸念されています。

長崎年平均気温(1872-2023)

※長崎の年平均気温の推移(福岡管区気象台ホームページ、2024)

救急搬送人員数(H23-R5)

※長崎県内の熱中症救急搬送者数の推移

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