Vol.209 中国(王盈)

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草の根スポーツ

  桜がだんだん咲き始め、少しずつ気温も高くなり、外に出てスポーツをする季節がやってきましたね。皆さんは普段どんなスポーツをしていますか。中国では、日本のマスコミでも取り上げられたことがある「広場ダンス」をはじめ、屋外の「草の根」スポーツが大変人気です。今年はオリンピックの年でもあり、今回は中国の「草の根スポーツ」について紹介したいと思います。

一、広場でダンス

  夕方になり、中国の公園や市民広場へ行くと、明快な音楽に乗ってラジオ体操のようなダンスを踊っている女性たちをよく見かけます。グループによって振り付けも音楽も違います。社交ダンスや地元の伝統的踊りを踊っているグループもあります。このような集団で踊るダンスはすべて「広場ダンス」と呼ばれます。

广1広場ダンス中の女性たち、央広網より[1]

   同じユニフォームを着ている試合志向のグループを除き、ほとんどの広場ダンスグループに誰もが自由に出入りできるのです。ダンスの途中でやめてもいいです。自分に合わないと思ったら、別のグループに気軽に移動できます。広場ダンスを通して友達も作れますが、そういう気がなくてただ踊りたいのなら、一緒に踊っている人に名乗らなくてもいいです。簡単にいえば、他人とコミュニケーションするかどうかは自分次第です。

  ダンスの場所は徒歩で到着できるところにあり、ただで参加でき、自由に出入りもできるため、彼女たちにとって夕食後の運動としてはとてもふさわしいのです。大人気で、2015年から全国広場ダンス大会も開催されるようになりました。

2018dance2018年全国広場ダンス大会決勝戦、湖北省社会体育管理センターより[2]

[1] https://www.cnr.cn/sxpd/dqzs/20171115/t20171115_524025708.shtml

[2] http://www.hbstzx.com.cn/ssbd/3891.htm                     

二、山村でボールゲーム

   中国の南西部にある貴州省の山間部に位置している黔東南ミャオ族トン族自治州の村民たちはボールゲームにはまっています。

   2022年の3月、台盤村という村で貴州省のアマチュアバスケ大会が開催され、村の総人口は1200人にも達していないのに、会場に集まった観客は2万人以上。会場に入らない人ははしごを立てたり、家の屋根に登ったりして観戦し、家から持ってきた鍋やタライを叩いて応援して現場はとても盛り上がっていました。試合もインターネットで中継され、大きな注目を集めました。「村BA」と呼ばれるこのアマチュアバスケ大会は参加者に職業や年齢の制限はありませんが、村民でなければなりません。

cba1台盤村「村BA」の現場、人民網より[1]

cba2第三位を勝ち取ったチームがカモを受賞、新華網より[2]

   会場の台盤村は村バスケの発祥の地と見なされています。村民の90%以上はミャオ族で、数十年前からミャオ族の伝統行事に合わせて、村の若者たちはバスケットボールの試合をしてきました。タイムになると、民族歌謡や舞踊といったパフォーマンスが披露され、勝利したチームへの賞品は地元の農産物(コメ、魚、カモなど)とミャオ族の工芸品(銀帽子や刺繍など)です。

   ちなみに、台盤村の隣にある榕江県で爆発的人気を集めているのはサッカーです。「村超」と呼ばれる村サッカーリーグが生まれて、試合の動画はショット動画アプリ「抖音」で数億回以上再生されています。[3]

cl貴州「村超」サッカーリーグの試合中の様子、CNSより[4]

[1] http://j.people.com.cn/n3/2022/0816/c94475-10135815.html

[2] https://www.hunantoday.cn/news/xhn/202303/16222382.html

[3] 「サッカー「村超」が中国で爆発的ヒット 草の根の特徴が注目を浴び」2023年7月2日 CNS https://www.afpbb.com/articles/-/3470533

[4] https://www.afpbb.com/articles/-/3470533

三、龍船で勝負しよう

 長崎の方は「ペーロン」、いわゆる龍船競漕は馴染み深いでしょう。中国でも、端午節という祝日が来ると、各地で龍船競漕大会が開催されます。龍船競漕の起源については諸説あり、二千年前の戦国時代、汨羅の河に身を投げた楚国の三閭大夫・屈原の体を魚に食べさせないために人々が船を使って救いに行ったことから始まったというのは通説です。

 広い水面に龍船を何隻か並べて直線のコースでスピードを競うのがほとんどです。

龍船広東省広州市の龍船競漕、新華社広州より[1]

 しかし、広東省佛山市のDieJiaoという村で開かれた龍船競漕はこうではありません。

龍船1DieJiao龍船競漕の試合現場、佛山日報より[2]

 試合の場所はDieJiaoを流れている曲がりくねった川。最も狭い場所はわずか6mで、コースの中に連続カーブもあります。一隻ずつ試合のコースを挑戦し、最速で走ったチームが優勝。

 龍船の長さは25mもあり、特にカーブを曲がるとき、ミスすると直接岸にぶつかります。しかし、DieJiaoレースの選手はできるだけ加速して誰よりも早くカーブを曲がりきるようにします。彼らから見れば、「ストレート」だったらだれでもスピードを出せますが、全速でカーブを曲がりきれる人こそ龍船競漕のマスターと呼ばれるのです。ちなみに、DieJiaoレースではチーム戦以外に個人戦もあります。

叠3転覆した龍船、澎湃新聞より[3]

[1]https://jp.xinhuanet.com/20230622/9d0d34b4530e41988c195738532e3f1d/c.html?page=1

[2]https://www.sohu.com/a/317652042_696730

[3]https://www.thepaper.cn/newsDetail_forward_23537079

 


 去年、長崎に来て初めて見に行ったのはペーロン大会、その後は長崎くんち、ランタンフェスティバルも体験して、長崎と中国との関係の深さを再認識しました。長崎の四季や景色をまだ存分に楽しんでいないうちに任期満了を迎えます。この一年間、CIRという仕事のおかげで、たくさんのイベントに参加し、幅広い年齢層の方々にも出会い、「日本」に関する見聞を広めてきました。上海からのクルーズ船が再び長崎港に寄港し、長崎と上海の空の便も再開し、上海生まれの私にとって長崎がまた「近い」存在に戻りました。

 この一年間、お世話になりました。ほんとうにありがとうございました。また長崎か上海でお会いしましょう。以上も持ちましてお別れのご挨拶とさせていただきます。

 

 

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