Vol.207 中国(王盈)

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中国の新年

 明けましておめでとうございます!今年のお節料理はいかがでしたか。年末年始休暇はのんびりできましたか。

 皆さんにとっての新しい一年がもう始まったのでしょう。グレゴリオ暦の1月1日を一年の始まりとする国家がほとんどで、中国もこの日を「元旦」と名付けて祝いますが、より盛大に祝うのは「春節」です。「春節」とは中国の「農暦」による「正月初一」のことです。この日こそが一年の始まりとしている中国では、「明けましておめでとうございます」に当たる「新年好」はその日から言います。ちなみに、今年の「春節」は2月10日です。

 今回のコラムでは、中国の新年について少し紹介したいと思います。

一、「赤い」春節

 中国では、一年の中で最も大切な祝日は春節に違いありません。伝統的な意味の春節は農暦の12月、つまり「臘月」の8日か23日から1月、つまり「正月」の15日までで、結構長いです。日本の年末年始休暇のような休みは毎年変わりますが、大体7連休です。2024年の春節休みは2月10日から17日までの8連休です。

 春節の数日前から春節に向けての準備が始まります。家の中はもちろん、道路や建物、赤い提灯をはじめ、あらゆるところをできるだけ赤で飾ります。春節が近づくと、服を赤にする人も増えてきます。中国のナショナル・カラーと見なされている赤はこのような慶事に使われ、おめでたい色として好まれています。

春節1

                          中国の「春節」[1]

[1] https://www.zcool.com.cn/work/ZMjgzOTM0Njg=.html

 中国では、春節が明けると、新しい干支を迎えます。「本命年」という自分の干支(えと)の年は運が悪くなる年とされ、厄払いのため、「年男・年女」は赤いアクセサリーや下着など、赤いものを身につけるのです。赤は邪気を払う色とも信じられています。

年服

「年男・年女」用赤い下着[1]

[1] https://blog.goo.ne.jp/lvxiaoling/e/af4e67b04caf9bc7dd1637db3a99a7ac

                     

二、最も大事な一食「年夜飯」

 長い春節の中、最も重要視されているのは「除夕」、つまり大晦日です。この日の夜に家族全員そろって「団円飯」(団欒のご飯)とも呼ばれる「年夜飯」を食べて新しい一年を迎えるのがしきたりで、どんなに遠いところにいても年夜飯までには実家に到着しなければなりません。一家団欒を最大の幸せと見なしている中国では、平常時であれば春節時期に帰省や旅行で延べ30億人が移動するとされ、「世界一の大移動」と呼ばれています。[1]

[1] 「中国で春節の帰省ラッシュ始まる 約30億人が移動」2019.01.24 CNN https://www.cnn.co.jp/world/35131740.html

 この一年で最も大事な一食である」「年夜飯」は地域や家庭によってその具材も異なりますが、お節料理のように定番料理もあります。たとえば、皆さんご存じの餃子。餃子の形が昔の貨幣「元宝」に似ているので、餃子を食べると金運がいいという縁起担ぎで食べられています。しかし、私のふるさと上海を含め、南部の多くの地域では餃子は食べません。

新年

「年夜飯」[1]

[1]https://cccbkk.org/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E4%BA%BA%E8%BF%87%E6%98%A5%E8%8A%82/

 しかし、どこの「年夜飯」にも欠かせない一品があります。それは魚料理です。中国語の「魚」の発音は「余」と同じ、「毎年魚がある」の「年年有魚」は「毎年余りがある」の「年年有余」と同じ発音で、縁起がいいものとして食べられます。

魚

「年年有魚」[1]

[1] https://www.arachina.com/festivals/spring-festival/food.htm

 

三、元宵で「春節」を締めくくる

 春節から15日目は「元宵節」と呼ばれ、「元宵」とは新年最初の満月の夜の意味です。「満月」は円満、団らんの象徴とされ、もちろん食べ物も「満月」が連想できる形となります。中秋節の「月餅」のように、元宵節は「白玉」のようなもち米の粉で作った「湯園」・「元宵」を食べます。「湯園」・「元宵」は茹でて食べるのが普通ですが、蒸したり、揚げたりして食べるのもあります。餡はゴマやアズキで作る甘いものや肉で作る塩辛いものもあります。ちなみに、「湯園」・「元宵」、粽、月餅などの伝統食物を食べる節句になると、その味付けに関する「甘党」と「辛党」の争いは毎年ネット上で議論を引き起こします。

元宵

「元宵節」のイメージ[1]

[1] https://www.sohu.com/a/224404143_743183

 新年最初の満月の夜、「灯籠」(提灯のこと)を灯し、幸福を祈願するようになったのは漢の時代だそうです。「元宵灯会」、つまりランタンフェスティバルは今も「元宵節」の定番祭りです。灯籠が夜空を照らすとき、町中は灯籠を見に出かけた人々でとても賑やかです。      

豫園

上海の「豫園灯会」[1]

[1] https://www.thepaper.cn/newsDetail_forward_21342659

 上海の「豫園灯会」、南京の「秦淮灯会」、ハルビンの「氷灯会」など、毎年中国各地で盛大なランタンフェスティバルがたくさん行われますが、灯籠を作る職人はほとんど四川省の自貢出身です。自貢では唐・宋の時代から絶えずに灯会を行い、灯籠の製作技術もよく保存されており、自貢灯会は今の中国各地のランタンフェスティバルの原型だと言われています。[1]

[1] 「自貢灯会」と「灯の歴史」については、下記のページを参照。http://zgdenghui.cn/about.asp?bid=344&cid=34

自貢自貢の「中華彩灯大世界」[1]

[1] https://new.qq.com/rain/a/20220215A07EQ600

 「元宵灯会」の楽しみは多種多様な灯籠を鑑賞するだけではありません。「猜灯謎」という伝統遊びもあります。「猜灯謎」とは灯籠に吊るした短冊に書いた謎々を当ててみることです。謎も面白く、解いたら賞品ももらえるので非常に人気があります。

謎

「灯謎」が吊るされた灯籠[1]

[1] http://www.dashangu.com/postimg_13595012_7.html

 年末年始の連休が春節の七日目前後で終わりますが、元宵節まで休む人も結構います。元宵節は伝統上新年祝いを締めくくる日で、この日を過ぎたら新しい一年はもうはじまったと実感が湧いてきます。

 灯籠の灯りが消されるとともに、出発の時もやってきます。荷物を片付け、故郷の老いた両親やまだ幼い子供と別れ、出稼ぎ先へいかなければならない人々にとって、一家団欒で過ごした「春節」の思いは来たる1年間の在外生活を支える最大の力でしょう。

 

 

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