Vol.201 中国(王盈)

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中国のショート動画ブーム

 長崎の皆さん、「大家好」(Da Jia Hao)!王盈です。5月末に長崎県庁に着任した中国人国際交流員です。

 今回は中国で大人気の「短視頻」(Duan Shi Pin)、つまりショート動画について、皆さんに紹介したいと思います。

 中国の総人口は14億人、ネットユーザーは10.67億人、そのうち、ショート動画のユーザーがなんと10.12億人もいます![1]つまり中国のネットユーザーのほとんどはショート動画を視聴しています。それに、ショート動画を見る時間は一人当たり一日2時間半ぐらいもあり[2]、新・日常茶飯事と言っても言い過ぎではないでしょう。

[1]《今天“刷”短視頻了?》、2023年03月17日、《人民日報海外版》

http://www.news.cn/tech/20230317/34ecf5483af04dbd9358713fd8fce8ab/c.html

[2] 《我国短視頻用戸超10億 人均単日刷短視頻超過2.5个小時》、2023年03月30日、《揚子晩報》

https://news.cctv.com/2023/03/30/ARTIZXWYdZPoh3amwsIgdt97230330.shtml

画像1                           (中国のショート動画アプリ)

 このショート動画ブームのなか、中国産のショート動画アプリもたくさん生まれてきました。その中で「双璧」と認められているのは「抖音(Douyin)」(中国語で振動音という意味)と「快手(Kuaishou)」(中国語で手がはやいという意味)です。

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                        (「抖音」と「快手」のインストールページ )

 「抖音」の国際版「TikTok」は全世界の月間アクティブユーザー数は10億を超えています。アメリの利用者も1億を超えており、10代の3人に2人がTikTokユーザーとされます。ちなみに、日本でもおよそ1500万人が日常的に使っていると推計されます。[1]

「快手」の国際版「kwai」は日本を含め世界中で利用されており、7億人以上のユーザーが登録しています。[2]

[1]「米国TikTok問題の落としどころと日本の対応」、2023年04月12日、木内登英  https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2023/fis/kiuchi/0412

[2] 「快手ってそもそも何?訪日中国人向けマーケティングに有効?」、2022年11月16日、LIFE PEPPER https://lifepepper.co.jp/china/kuaishou/

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                         (「抖音」と「快手」の国際版)

 では、中国人がどんなショート動画を見ているのかご紹介しましょう。

1、中国の人気ショート動画

 中国ショート動画の人気投稿を見てみましょう。ネットネーム「張同学」(同学とは同級生の意味)は中国東北地方の農村に住んでいる農家で、「抖音」に投稿したショート動画が1.4億回以上の「いいね!」もゲットしました。

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                       (「張同学」の「抖音」アカウントと投稿)

 約1800万のフォロワーを持っている「張同学」の投稿内容は木で驢車(ろしゃ)を作ったり犬や鶏に餌をやるなど農家としての仕事、自分で料理を作ったり自宅を掃除したりなど、彼自身の日常生活の記録ですが、「抖音」では大人気で、トップインフルエンサーの一人にもなりました。

 「張同学」のように、自分の日常生活を記録して投稿するのは中国在住の中国人だけでなく、世界各地に住んでいる中国人や外国人もいます。たとえば、抖音では759.2万ものフォロワーを持っているアメリカ人ジェリー・コワル(Jerry Kowal、中国語の名前は「郭杰瑞」)、彼の投稿内容は主にアメリカの日常生活の紹介やアメリカと中国の比較です。[1]

[1] 《“戦地网紅”郭杰瑞》、2020年05月05日、《文摘報》

https://epaper.gmw.cn/wzb/html/2020-05/05/nw.D110000wzb_20200505_2-05.htm

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                         (Jerry Kowalの写真、「文摘報」より)

 日常生活の記録だけでなく、知識を普及する投稿もたくさんあります。下の写真に実験をしている白髪の女性がいます。彼女のネットネームは「不刷題的呉姥姥」(「猛勉強しない呉ばあちゃん」の意味)で、同済大学の物理学教授でした。「呉姥姥」が自分で物理学の実験をしながら分かりやすく説明するのをショート動画にして総合動画アプリ「ビリビリ動画」に投稿しています。その投稿を見て物理学の面白さがすぐわかるし、なんか物理学も楽しめるような気がします。「ビリビリ動画」では「呉姥姥」のフォロワー数が150万人も超えています。

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                      (実験中の「呉姥姥」、「澎湃新聞」より[1]

[1] 《全网百万粉糸、号称“不刷題”的“呉姥姥”,到底是誰?》、2021年11月14日、澎湃新聞 https://www.thepaper.cn/newsDetail_forward_15378507

 知識や知恵を共有するのは教授や専門家だけではありません。たとえば、料理の作り方についての投稿にはプロのシェフからの投稿もありますが、主婦や料理好きの人などからの投稿もいっぱいあります。自慢の料理の作り方を共有したいと思って投稿するユーザーもいれば、その動画を見るだけでなくまねして作ってみたユーザーもいます。一番面白いのは、自分がまねして作る過程と結果を「原作」と比較するショート動画を投稿したユーザーもたくさんいます。

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                        (人気アプリの一つ「小紅書」)

 自分の生活経験や知恵をショート動画で共有する人が多くなるほどそのアプリを利用して調べる人も増えています。たとえば旅行へ行くとき、旅行先の情報を把握するため、旅行や美容に関する投稿がかなり集中している「小紅書」というアプリを利用して、動画を見て調べる人が多くなりました。

 また、ショート動画アプリで仕事を探す人もいます。ショート動画アプリでは求人情報のショート動画もよく見られます。

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                       (求人ショート動画、「抖音」より)

 

2、進化しつつあるショート動画アプリ

 ショート動画のユーザーが増える一方、ショート動画アプリも進化しています。たとえば、「ライブ配信」や「ショッピングモール」などの機能が付くようになり、ショート動画アプリでも買い物できるようになり、買い物するユーザーも多くなってきました。ショート動画アプリを新たな販路とみなして企業側も積極的に利用しています。最近では、ショート動画アプリで物件の売買もできるようになりました。

 就職活動をより一歩応援する機能を開発したショート動画アプリもあります。「快手」が「快聘」(快手招聘、早く採用という意味も含めている)機能を開発しました。求人側が「快手」のライブ配信を利用して、工場の現場や仕事内容などを送信し、求職側が求人側と直接話ができ、ライブ配信のリンクをクリックして、簡単に応募できるようになりました。

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                         (快手の雇用ライブ配信)

 今、毎月2.5億人のブルーカラーが「快聘」で仕事を探しており、10万社以上の企業が求人情報を出しているといいます。ショート動画アプリやライブ配信プラットフォームを利用して就職を希望するブルーカラーの割合は17.7%で1年か2年前より12.4%増加したそうです。[1]

[1] 《<中国藍領群体就業研究報告>発布:直播招聘成求職新途径》、2022年12月28日、新華網http://xinhuanet.com/tech/20221228/e776b4a1aade4e11a0d55580e4a11a9a/c.html画像15

               (ブルーカラー層の求職ルートのプリファレンス、「新華網」より)

 今後、就活にショート動画アプリを利用する人や企業もより多くなるのでしょう。

 

3、まとめ 

 上記のように、ショート動画が中国人の日常生活に深く浸透しています。その影響を受けてショート動画アプリもずっと進化しています。でも、変わっているのはショート動画アプリだけではないでしょう。「ショート動画見た?」も「ご飯食べた?」のような日常挨拶の一つになる日もいつか来るのかもしれません。

 今回はここで終わらせたいと思います。最後、一つ質問させていただきます。中国語では「ショート動画を見た?」を表すとき、「 “刷”短視頻」と言うのです。なぜ「見る」の中国語「看」ではなく、「こする」の意味の「刷」を使うのか、一緒に考えてみましょう。次回のコラムでお答えします。

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