80年前、世界で使われた最後の原子爆弾は、この地で暮らしていた人々と街を焼き尽くしました。およそ7万4千人もの尊い命を奪い、そして生き残った我々人類に、決して目を逸らすことが許されない現実を残しています。
核兵器は、平和を願う多くの善良な市民の命を一方的に奪うだけでなく、生き残った者の人生をも破壊する非人道的なものです。80年前、ここ長崎に落とされた一発の原子爆弾による記憶と苦しみは、世代を超え、今ここに生きる我々の中に消えることなく、刻まれています。
世界中の皆様に問います。核兵器を突きつけ合って暮らすこの世界は、皆様が求めている平和で安全な世界なのでしょうか。想像してみてください。ある日、突然放たれた核兵器によって、かけがえのない家族や友人、そして愛する故郷が焼き尽くされ、砕かれ、二度と元の姿に戻らなくなってしまった世界を。
世界中の指導者に問います。核兵器に頼らず、平和で安全な世界を築くことは本当にできないのでしょうか。ここ長崎を破壊し尽くした原子爆弾よりもはるかに強力な核兵器を突きつけ合うことが、国民の安全を保障するため、指導者の皆様が見出せる唯一の方法なのでしょうか。
核兵器が存在する以上、長崎が最後の被爆地であり続ける保証はありません。
今、世界中の指導者、そして我々は核兵器の存在が、私たち一人ひとりの未来を、人類の持続可能性をも脅かす、具体的な脅威であることを、改めて強く認識しなければなりません。
世界では、今なお分断が深まり、紛争が続いています。平和を願うこの時でさえ、紛争地では無惨に命を奪い合い、関係のない人々を巻き込み、決して元には戻せない悲しみと絶望を生み出し続けています。
8月9日は、長崎県民にとって原爆犠牲者を慰霊し、平和への誓いを新たにする「祈りの日」です。
「長崎を最後の被爆地に」
私は、この言葉を皆で訴え、守り続けることが、平和で真に持続可能な世界を作るための唯一の道であると信じています。
あの日から80年。ここ長崎で消えることのない記憶は、決して人ごとではなく、いつでも「あなた」へ起こりうる現実であり続けています。本日この式典が、世界の指導者やすべての皆様と想いを一つにし、共に核兵器のない世界の実現に向けた一歩を踏み出すきっかけとなることを願ってやみません。
そして、ここ長崎の地においても、様々な立場におかれた方々の切なる想いを深く受け止め、政府におかれましては、広島で黒い雨に遭った方々と同じ事情にあった長崎の被爆体験者につきましても、救済をお願いいたします。
最後に、原爆犠牲者慰霊平和祈念式典に当たり、改めて長崎県民の皆様とともに、原爆犠牲者の御霊に謹んで哀悼の誠を捧げ、すべての御霊の安らかならんことをお祈りし、慰霊のことばといたします。
令和7年8月9日
長崎県知事 大石 賢吾
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