原爆犠牲者慰霊平和祈念式典に当たり、長崎県民の皆様とともに、原爆犠牲者の御霊に謹んで哀悼の誠を捧げます。
「核兵器も戦争もない平和で美しい地球をこどもたちへ」
これは、核なき世界を目指すという信念のもと、被爆者として国内外で原爆の悲惨さや平和の大切さを訴え続け、昨年、惜しまれつつ97年の生涯を閉じられました井(い)黒(ぐろ)キヨミさんの言葉です。
原爆投下から79年。被爆者の高齢化が一段と進み、毎年多くの方々が世界の平和を願いながら亡くなられる中、その託された思いを着実に次の世代へ引き継いでいくことが今を生きる私たちに課せられた使命であります。
しかしながら、核を取り巻く世界情勢は、ウクライナ侵攻の長期化などを背景に緊迫感が増しており、冷戦終結後では最も厳しい状況にあります。
その一方、昨年12月に長崎市で初めて開催された「核兵器のない世界」に向けた国際賢人会議の委員の方々が、また、今年4月にはアメリカ合衆国の国連大使が、ここ平和公園において献花と黙祷を捧げ、「長崎を最後の被爆地に」という私達の思いを受け止めていただきました。
核なき世界の実現には、核兵器の非人道性と、さらには、核兵器が世界の持続可能性さえも脅かすものであることを国際社会がしっかりと共有し、対話と行動を重ねていくことが重要であります。
世界の指導者の皆様にお願いします。是非長崎を訪問され、被爆者の声に耳を傾け、その肌身を通して被爆の実相を正しく理解してください。そして、核兵器は再び使うことが決して許されない兵器であることを深く心に刻んでください。
また、世界中の皆様におかれましても、核兵器の問題が、環境汚染や気候変動と同じく、持続可能な世界を実現するために重要であることを認識いただき、自分事として核兵器廃絶に向けて行動いただくことを願っております。
さらに、日本政府におかれては、唯一の戦争被爆国として、核兵器廃絶の実現に向け、立場の異なる国々の橋渡しとしての役割を果たすことを強く願います。
そして、どうか、広島で黒い雨に遭った方々と同じ事情にあった長崎の被爆体験者の救済をお願いいたします。
8月9日は、原爆犠牲者のご冥福をお祈りし、平和への誓いを新たにする「県民祈りの日」であります。
ここに、多くの御霊の安らかならんことをお祈りし、被爆者や被爆体験者のご健康を願い、核兵器のない平和な世界の実現に向けて一層の努力を重ねることをお誓い申し上げ、慰霊のことばといたします。
令和6年8月9日
長崎県知事 大石 賢吾
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