▼RED DATA BOOK 2001
1.長崎県レッドデータブックの概要
1-1.レッドデータブックとは
現在、河川や海岸の改変、森林や草原の消失、乱獲等の人間が行う活動により多くの野生動植物 が絶滅したり、絶滅の危機に追いやられており、毎年4万種に及ぶ野生動植物の種が絶滅しつつあると言われています。レッドデータブックは、絶滅のおそれがある希少な野生動植物を選定評価、リストアップし、その種の生態分布、圧迫要因などを明らかにした資料です。
1966年に国際自然保護連合(IUCN)がはじめて発刊した図書の表紙が赤であったことからこの名称が使われています。
1-2.国の動き
我が国においては、1995年生物多様性国家戦略が策定され、生物多様性の保全と持続可能な利用のための基本方針が掲げられおり、地域レベルにおける生物多様性保全の必要性を求めるとともに、「我が国に生息・生育する動植物に絶滅のおそれが生じないこと」を生物多様性確保のための目標として位置づけています。
1991年、我が国で初めての「レッドデータブック(日本の絶滅のおそれのある野生生物)」が環境庁により取りまとめられました。その後の情報の集積、野生生物の状況の変化、世界基準との整合等を考え、動植物全体にわたって見直しがおこなわれ、2000年にレッドリストの改訂が完了しました。
現在、ほとんどの都道府県で、レッドデータブックの整備がおこなわれており、地域レベルでの生物多様性保全のための基礎資料が集められています。
(生物の多様性)
地球上には豊かで多様な生物が生息しています。これらの生物の種、その遺伝的多様性、そしてそれらが構成する生態系をひとまとめにしたのが、生物の多様性です。
人間社会は生物の多様性に多く依存してきました。たとえば、森林生態系は、燃料・医薬品・建築 資材・動物の生息地を提供します。湿地や水辺の生態系は、水質を保全し水生生物を保護します。
海洋生態系は、食料とエネルギーを供給し、気候を調整しています。農業生態系は、食料生産を担っています。生態系は、さらに、レクレーションと観光の機会も与えているのです。
しかし、自然が失われ、生物が絶滅していくと、生物の多様性も失われ、私たちの生存基盤そのものが揺らいでいくのです。
1-3.レッドデータブック作成の目的
長崎県は、南北約310km、東西約210kmにわたる広大な空間を占めるとともに、海岸延長 4,177km、島嶼数は約600となっています。県の面積約4,100km2の約60%を山地・火山地が占めており、海域では対馬暖流が沿岸を北上し、また、かつて大陸と陸続きであったことからも、極めて特徴的な環境を持っています。
例えば、大陸系の動植物としてツシマヤマネコやチョウセンヤマツツジなどがあり、南方系の植物としてハマジンチョウやショウベンノキ、長崎県に固有の植物としてイトラッキョウなどがあげられます。また、日本列島の西端に位置することから、様々な分布限界種が存在しており、多様な生物相を育んでいます。
このような極めて特異な地域特性の上に成り立っている多様な生物相の中で、県内に生息する希少野生動植物の分布状況を把握し、適切な保護対策に活用するための基礎資料として長崎県レッドデータブックは作成されました。作成期間内には、1999年に長崎県環境影響評価条例が施行され、2000年に長崎県環境基本計画が策定されるなど、生物の多様性の保全のための施策も同時に進展しています。
1-4.レッドデータブック作成の経過
レッドデータブックの作成にあたっては、1998年に各分野の専門家からなる『長崎県希少野生動植物評価選定(レッドデータブック)委員会』を設置し、取りまとめた。
また、現地調査及び情報の収集については、以下の方々の御協力をいただきました。
基本部会(地形・地質):小田忠昭氏
植物部会:宮崎正隆氏、山田スミ子氏、宮崎 勉氏、村山茂樹氏、松本作雄氏、永留 浩氏
鳥類部会:江浜幸一氏、江崎健次氏、谷口千里氏
魚類・甲殻類部会:浦川虎郷氏、黒川貴志氏、碓井利明氏、前田耕作氏、渡辺博光氏
1-5.レッドリスト掲載種数一覧
| カテゴリー |
絶滅 |
野生絶滅 |
危惧TA |
危惧TB |
危惧U類 |
準絶滅 |
情報不足 |
地域個体 |
県地域 |
|
| 分類群名 |
EX |
EW |
CR |
EN |
VU |
NT |
DD |
LP |
県LP |
総計 |
| 維管束植物 |
20 |
1 |
111 |
238 |
144 |
27 |
9 |
- |
- |
550 |
| 哺乳類 |
- |
- |
3 |
- |
5 |
4 |
4 |
- |
- |
16 |
| 両生類 |
- |
- |
- |
1 |
3 |
2 |
- |
- |
- |
6 |
| 爬虫類 |
- |
- |
- |
1 |
1 |
6 |
3 |
- |
- |
11 |
| 魚類 |
1 |
- |
3 |
1 |
5 |
6 |
3 |
- |
3 |
22 |
| 海産哺乳類 |
- |
- |
- |
- |
1 |
- |
3 |
- |
- |
4 |
| 藻類 |
- |
- |
1 |
- |
- |
- |
1 |
- |
- |
2 |
| 鳥類 |
1 |
- |
34 |
14 |
10 |
15 |
19 |
4 |
- |
97 |
| クモ類 |
- |
- |
- |
- |
- |
10 |
8 |
- |
- |
18 |
| 昆虫類 |
- |
- |
58 |
85 |
67 |
43 |
- |
12 |
- |
265 |
| 甲殻類/剣尾類 |
- |
- |
- |
- |
1 |
3 |
2 |
1 |
- |
7 |
| その他無脊椎 |
- |
- |
1 |
- |
1 |
- |
- |
- |
- |
2 |
| 総計 |
22 |
1 |
211 |
340 |
238 |
116 |
52 |
17 |
3 |
1,000 |
1-6.レッドリスト
維管束植物 昆虫類 哺乳類他
2.希少野生動植物保全対策について
2-1.希少野生動植物保全方針の策定
平成13年度にレッドデータブック委員会の会長、各部会長からなる「希少野生動植物保全検討委員会」を設置し、
レッドデータブック掲載種1000種の絶滅性が増すことを防ぐために「長崎県希少野生動植物の保護に関する基本方針」
の策定を行いました。
2−2.県自然環境保全地域候補地の現地調査
平成14年度は、13年度で策定した保全基本方針で緊急に保護が必要であると示された10カ所について、県自然環境保全条例の「野生動植物保護地区」に指定できるか、動植物の専門家を含めた現地調査を行っています。
調査を行い指定が可能な地区については保全計画書を作成し、地権者の同意、関係市町村長の同意を得た後、自然環境保全審議会の答申を得て、できるだけ早い時期での保護地区指定を目指すこととしています。
(注)保全計画書とは「保全すべき自然環境の特質と現況、保護保全の必要性、稀少な動植物の種類と分布、土地の権利制限を調査し、規制に関する方針をまとめたものです。