最近はノロウイルスという名称は定着しましたが、以前はその性状からSRSV(Small
Round Stracture Virus:小型球形ウイルス)と呼ばれていました。
SRSVは、1997年の食品衛生法改正で食中毒を起こすウイルスとして指定されました。この名称は正式なウイルス名ではなく、電子顕微鏡で見たウイルスの形状から通称的に呼ばれたものでした。その後、2003年に”ノロウイルス”という正式名称に変更されました。
ノロウイルス食中毒の主な症状は、発熱、頭痛、腹痛、嘔吐、下痢などの胃腸炎症状ですが、風邪の症状ともよく似ています。これらの症状が全て発症するということではなく、人により様々です。一般的に症状は軽く、1〜2日で治りますが、まれに激しい下痢を伴うこともあります。ただ、下痢症状もなく軽症で済む場合でも、嘔気(むかつき)からくる食欲不振により脱水症状に陥ることがあるため、特に子供や高齢者の場合は水分補給を心がけることが大切です。
ノロウイルス食中毒の特徴は、冬季の生カキを原因とした事例が多いことです。
何故でしょうか?それはノロウイルスの生態系に原因があります。
ノロウイルスに感染した患者から排泄された排泄物や吐物は下水路などを通じ汚水処理施設で処理されますが、ウイルスの一部は浄化処理をかいくぐり、河川に排出され、さらに海に到達すると、カキなどの二枚貝が、プランクトンなどのエサと同時にノロウィルスも体内に取り込み、体内の中腸腺で濃縮されます。いろいろな二枚貝でこのようなウイルスの濃縮が起こっていると思われますが、われわれが二枚貝を丸ごと生で食べるのは、主に冬場のカキに限られます。このため、冬季にこのウイルスによるカキの食中毒の発生が多いと考えられます。
ノロウイルスは、口に入ってから24時間〜72時間の潜伏期後、胃腸炎症状を発症し、回復後も数日〜数週間以上、糞便中にウイルスが排泄されます。食品から人に感染(食中毒)するだけでなく、人から人への感染(感染症)も起こすために、原因食品を食べていない人が遅れて発症することもまれではありません。このことから原因食品の特定が容易でないこともノロウイルス食中毒の特徴の一つです。元をたどればカキが原因食品であっても、ウイルスは感染者の汚物や糞便を介して家族などの接触者に感染(二次感染)し、さらには感染者を介して別の食品が汚染される場合もあるからです。
予防法としては他の食中毒と同様に手洗いの励行ですが、さらにカキは鍋やフライ等、十分に火の通る献立にすることが一番でしょう。それでも家族内に患者が発生した時は、患者自体の看護は言うまでもありませんが、「二次感染を起こさない」ことが重要です。そのためには患者に接触後調理する場合は念入りに手指を洗浄する、症状が回復後もしばらくは入浴順序に気をつけるなど、家庭内でもノロウイルス対策への知識と配慮が要求されるところです。 |