長崎県国際交流員情報
 H16年12月
 Vol.7

 今年の6月から、県の国際交流員(CIR)の方々に自国の歴史や文化、身近な話題など提供していただいてまいりましたが、今回は観光課の沈英(シン・エイ)さんに登場していただきます。

日本語との出会い
 ダージャーハウ(皆さん、こんにちは)。
 中国から参りました国際交流員の沈英(シン・エイ)と申します。去年の4月から長崎県観光課で仕事をしております。
 この一年間半で長崎の魅力を身に染みて感じております。長崎の美しい景色、中国と西欧の影響を受けた独特な異国情緒、人の暖かさ、などが好きになりました。
 ご存知のように、現在、長崎県をはじめ九州各県が観光に大変力を入れており、特に中国からの観光客の増加を大いに期待しています。そのため、中国とのネットワークの構築に努めています。私もその掛け橋になれるよう頑張りたいと思います。
 私は日本の方々から「どうして日本語を勉強するようになったのか」とよく聞かれます。私も不思議だと思います。なぜかと言いますと、中学校のとき、私は英語が好きで、大学では英語を専門に勉強したいと思っていました。ところがある日、山口百恵が主役を演じる「赤い疑惑」という日本のテレビドラマを見て、山口百恵が歌っている「ありがとう」という主題歌は、メロディーも柔らかく、歌声も美しかったので、すっかり魅せられてしまいました。なんてすばらしい歌だろう、私も歌ってみたいなあと思いました。当時日本語のわからなかった私は、テープを聞きながら一つ一つの歌詞を中国語の発音で書き出しました。そして、テープに合わせて歌を覚えました。その時、もし日本語がわかっていたらこんなに手間はかからなかっただろうに、と思いました。程なくして、テレビで日本語講座の放送が始まりました。早速テキストを買ってきて、私はテレビで日本語の勉強を始めたのですが、学校の勉強に専念するために、途中で日本語の勉強は断念せざるを得ませんでした。しかし、日本語を勉強したいという思いはずっと持ち続けていて、やっと大学で日本語を専攻できるようになりました。
 卒業してから、日本語を生かせる仕事をしたいと思い、広東省汕頭市外事弁公室に就職しました。もしあの時、日本のドラマを見なかったら、日本語とは無縁だったでしょうし、今こうして日本で仕事することもなかったかもしれません。

汕頭市
 私の故郷は広東省の汕頭市です。汕頭は現地の潮州(汕頭を中心とした地方)方言で"Swatou--スワトウ"と発音され、北京語の発音によれば"Shantou--シャントウ"となります。 汕頭市は中国の東南部にあり、有名な華僑の故郷です。総面積は約2064平方キロ、総人口は現在480万人くらいです。1981年に中国の5大経済特別行政区域の一つとして位置付けられて以来、汕頭市は対外重要貿易港として目覚ましい発展を遂げて参りました。電子ソフト、超音波機器などの品質の高さは市場での競争力の強さを示しています。また、汕頭港は天然の良港で、漁業も盛んです。特にサワラやエビ、カニなどを中心に、高い漁獲量を誇っています。その一方で海外資本を導入したウナギやエビなどの養殖も盛んに行われ、その大半は海外に輸出されています。海上における養殖面積は3000ヘクタールにものぼります。
 汕頭には悠久の文化があり、独自の伝統が受け継がれてきました。最高級とされる上品で淡白な味付けの潮汕料理も、人々を引きつける魅力のひとつです。中でも特に、「中国茶道」といわれる潮汕工夫茶はよく知られています。精巧な潮汕陶磁器、ドロン・ワーク手法を使った潮汕刺繍、金メッキ木彫刻などの工芸美術品は世界各地でも販売されています。
 ここで、「潮汕工夫茶」について、ちょっとご紹介したいと思います。

港町−汕頭市

汕頭の名物−レイシ
唐代の楊貴妃が好んで食べたことで有名な果物

夕日に染まった大橋


金メッキ木彫刻

潮汕刺繍

工夫茶
 潮汕には「工夫茶」という独特のお茶の作法があります。 工夫茶は唐や宋の時代からの茶の習慣を受け継ぎ、清代に茶道として定着しました。かつては福建省方面まで広まっていましたが、何世紀もかけて、ここ潮汕で工夫茶として精緻な作法が編み出され、確立されました。「工夫茶」という言葉は潮汕方言で、色々と考えを巡らし、良い結果を生みだすという意味で、日本語とよく似ています。工夫茶には、入れ方と頂き方に独特の作法があります。
工夫茶
 工夫茶では、茶器、茶葉、水、入れ方、頂き方に非常にこだわりがあります。その入れ方は、中国古代の「茶聖」である陸羽の「茶経」を基にし、茶器も精緻なものです。コンロの形はひときれの管状のようなもので、高さは36センチぐらいで、上品な白地のものを使います。急須は楕円形で、口先は少し下に曲がって、持ち手は半円形になっています。大きい物には水が0.5リットルぐらいは入ります。茶碗と茶托は磁器が多く、内と外に山水画や人物が描かれる等の細工がほどこされています。コンロ、急須と茶托はそれぞれ一つで、茶碗はちょうど日本の盃くらい大きさの素焼きのもので、数はお客様の人数によって違います。
 工夫茶には12種の道具があります。1. 宜興の紫砂陶急須又は潮汕の磁急須 2. 白磁茶碗 3. 錫茶壷又は陶茶壷 4. 茶托(穴がある) 5. 皿(急須を置く) 6. 泥コンロ(今は、アルコールコンロ、電気コンロに変っている) 7. 団扇(コンロの火を起こすため) 8. 水差し 9. 茶釜 10. コンロを置く風炉先屏風 11. 茶卓 12. 盆
 茶葉は半発酵の烏龍茶「福建岩茶」や、渓茶や潮汕の「鳳凰水仙茶」などがお勧めです。しかし、緑茶、紅茶などの茶葉は渋くなってしまうため、工夫茶には合いません。福建武夷山の岩茶や福建南部の渓茶の鉄観音を一番好んで使う人が多いようです。潮汕で栽培された茶葉は福建茶と同じ製法で製茶されます。
 水は山の水が上、川の水が中、井戸水が下です。しかし、都市では山の水はなかなか手に入らないので、代わりに水道水を使っています。入れ方には次の八つの手順があります。
1. 茶を選別する:精選した茶葉を選り分けます。
2. 湯を待つ:湯が沸騰するのを待ちます。
3. 湯を注ぐ:茶釜から沸騰した湯を急須いっぱいに注ぎます。
4. 泡を取る:急須から浮き上がった泡を取り、蓋をします。
5. 急須に湯をかける:蓋をした急須の上から、湯をかけて、少し時間をおきます。
6. 茶碗を温める:湯を茶碗に注ぎ、茶碗を温めます。
7. 茶碗を洗う:湯で茶碗を洗い清めます。
8. 茶を注ぐ:手早く、同じ分量のお茶をそれぞれの茶碗に注ぎ分けます。注ぐ時には、はじめに
 急須を高く持ち上げて注ぎ、次に低いところから注ぎます。さらに、各々の茶碗のお茶の濃さが
 均等になるように、お茶を注ぎ分けます。最後に急須を振り、残った濃いお茶のエキスを、一滴
 ずつそれぞれの茶碗に注ぎます。これは「関羽の城巡り」とか「韓信の兵隊点呼」と言われる作
 法です。
 頂き方としては、お茶が熱いうちに茶碗を片手に取り、茶の香りを逃がさないように、もう片方の手を茶碗に添え、味わいながらゆっくりと頂きます。頂き終わったら、茶碗を顔に近づけ、さらに、茶の香りを楽しみます。
 このように潮汕の工夫茶は、人々の生活の中に根強く残っており、今でも、汕頭の家庭や、レストランでの食事の際には、必ず工夫茶が振る舞われます。工夫茶は、潮汕料理には欠かせないものであり、食前や食後に出される濃い目の工夫茶もその特色の1つです。工夫茶の作法は、非常に情緒豊かで、日々の生活における人々の工夫や知恵ともいえるでしょう。


 次回は1月末に更新予定です。 県の国際交流員はこれで一巡しましたので、トップバッターの韓国の金 英美(キム・ヨンミ)さんに戻り、また皆さんから楽しい話題パートUを御紹介いただく予定です。ぞうぞお楽しみに!
 ご意見、ご感想などお待ちしています。
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