日本初の試みは対馬から始まった。塩づくりへの新たな挑戦。対馬の塩。美味(おい)しい塩をつくるのは当たり前。対馬では今、環境にやさしく、地域経済を支援する塩づくりが始まっている。その驚くべき方法は、まさに対馬ならでは。塩づくりの歴史を変える新たな挑戦に迫る。
対馬の塩
日本一おいしい対馬の塩をもっと多くの人に届けたい

 美味しい塩は、美しい海水からしか生まれない。対馬の塩はこの基本条件を見事にクリアしている。対馬の海岸は壱岐(いき)対馬国定公園に認定されており、天然の海草が生い茂る清らかな海水に恵まれているからだ。
 東京に本社を構える塩メーカーの老舗「白松(はくまつ)」の代表を務める白木桂介(しらきけいすけ)さんは言う。「先入観をすべて捨てて、日本全国の塩を食べ比べてみました。そうしたら対馬の塩が一番おいしかったんです」。対馬でなんとか塩づくりができないかと考えていたとき白木さんが出会ったのが、兄弟で塩づくりをしていた権藤正展(ごんどうまさのぶ)さんだ。2人はタッグを組み、2004年、対馬の竹敷(たけしき)地区に「浜御塩工房(はまみしおこうぼう)」を設立。権藤さんが工場長となり、ここからすべてが始まった。

 

地域を元気にする最良のサイクルで美味しい塩をつくる

 浅芽湾(あそうわん)の南に位置する竹敷の地は、山と海に囲まれた場所。この静かな地で新たな塩づくりは始まっていた。
 浜御塩工房では対馬海流の海水を汲(く)み上げ、天日と風の力を利用して海水濃度を高めながら濃縮。それを伝統的な平釜で24時間以上炊き上げ、塩を結晶化させる昔ながらの方法を採用している。
 新しい試みのポイントは燃料にあった。平釜を24時間稼働させるためには相当の燃料が必要である。これまで工房では重油を使っており、多い時は1日4000リットルを使用していたという。この燃料を他のもので代用できないかと考えた結果、たどり着いたのが対馬産間伐材の破材からできる「木質チップ」だった。
 人工林の成長には間伐が不可欠。全国的にも間伐材は大きな問題となっているが、対馬も例外ではない。対馬の人工林ではヒノキや杉などの間伐材の約75パーセント、30万本が未利用材として山に残されているという。浜御塩工房では2011年1月から、この間伐材のうち建材として利用できない破材を購入し、それを燃料に塩づくりを始めた。
 重油の代わりに木質チップを燃料にすることで生み出されるものは多い。①間伐材を利用することで森は成長する。②林業が活性化され、地域産業や雇用の促進に繋がる。③環境にやさしい(木は二酸化炭素を取り込み成長し、専用ボイラーでの燃焼する際に成長時に取り込んだのと同量の二酸化炭素を放出するという考え方では、二酸化炭素排出量はゼロと計算される)。④対馬産の間伐材を対馬で消費するため、物流に伴う二酸化炭素排出量が重油に比べて少ない。
 森が豊かになれば、海が豊かになる。海が豊かになれば、美味しい塩ができるのである。「この取り組みは美しい海があり、山が多い対馬だからこそできるんです」と白木さんは話す。
 浜御塩工房では徹底した衛生管理のもと、1日に約450キログラムの塩が作られている。塩職人たちは釜から上げるタイミングなどを見計らいながら、熟練の技を光らせる。伝統的な技と新しい技術の融合で生まれた塩は「えこそると」と名付けられ、全国へと出荷されている。

 

木質チップ

問い合わせ先
白松(浜御塩工房)
対馬市美津島町竹敷深浦4-133 TEL.0920-54-8090

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