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黒丸踊を受け継ぐ若きルーキー久保拓郎さん

 

くぼたくろう

1988年、大村市黒丸町生まれ。この春より生まれ育った町で黒丸踊の継承者として練習を開始。現在11月末の「法養祭」で披露すべく、先輩たちに教えを請いながら猛特訓中。二児の父でもあり、休日に子どもと一緒に遊ぶのが何よりの楽しみ。

このコーナーでは地域を愛する人で、伝統芸能や伝統技術を大切に守り伝えている人やまちおこし・珍しいことに取り組んでいる人などをご紹介します。

息子に誇りに思ってもらえるような演技を披露したい。

 1470年、大村家第16代領主純伊(すみこれ)が有馬(ありま)氏との戦いに敗れ、およそ6年間の流浪の末、大村領を再び奪回した時に祝賀踊として踊ったと伝えられる黒丸踊(くろまるおどり)。毎年、黒丸踊の始祖・法養(ほうよう)の命日にあたる11月28日に黒丸町の法養堂で行われる「法養祭」で奉納されるほか、様々なイベントでも披露される伝統芸能である。
 530年もの間受け継がれてきた黒丸踊を継承している黒丸踊保存会で、この春より練習を始め、若き担い手として期待されているのが久保拓郎(くぼたくろう)さんだ。久保さんが担当するのは黒丸踊の花形ともいうべき「花からい」の役。直径約5メートル、重さ約60キロの大花輪(おおはなわ)を背負って太鼓を打ち、唄を歌う難しい役である。
 実は久保さんは、小学生の頃に鉦(かね)たたきとして黒丸踊に参加していた。父親と兄が踊っている姿を見て、自分もやってみたいと思ったのがきっかけだったという。そして11年後、今度は花からいとして参加しようと決意。久保さんの心を動かしたのは3歳の息子だった。「息子が、おじいちゃん、つまり僕の父が踊っている姿を見て、格好いいと言って尊敬しているんです」。息子に尊敬される父親になりたい、久保さんの心にあるのはその一心だった。
 とはいっても、練習は簡単ではない。踊りの形、唄、太鼓のタイミングと、覚えることは山のようにある。先輩たちの動きを見ながら、ひとつひとつ体と頭にたたき込んでいく。家に帰ってからも、引退した父にアドバイスをもらう。本番で重い大花輪を背負うことを考えると、バランスを取りながら優美に動くことは非常に難しい。本番までに出来るだろうか…不安ばかりが募る。それでも週に一度、仕事や学校を終えたメンバーと練習場である黒丸公民館に集まり、気持ちを一つにすれば心は少し軽くなる。
 530年という歴史もプレッシャーだ。「今は覚えることで精一杯ですが、ゆくゆくはこの伝統芸能を自分たちが次の世代に伝えていかなければならないと思っています」。

 小さい頃から憧れていた父親。自分も息子にとってそんな存在になりたい。11月の本番まで、いやこの町で伝統を守り続ける限り、久保さんの挑戦は続いてゆく。