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語りかける風景 御厨ガラス工房 しなやかなフォルムと深遠なる赤色に宿っていたのは美を求める作家の魂だった

 

 大村の山中にひっそりと佇(たたず)むガラス工房。展示室に並べられた数々の作品を見て驚いた。その豊富なデザインと多彩な色の融合——。これらがたった一人の人間によって生み出されたことに。
 中でも心を惹きつけたのは真っ赤な酒杯である。これまで見たことのない、まるで吸い込まれるようなその赤色には「カシス紅(くれない)」という美しい名が付けられていた。
 難しいことは分かららない。しかし、本物だけが放つ力というのは素人でも充分に感じることができるものだ。技術の高さだけでは生まれ得ない神々しいまでの存在感。真っ赤な酒杯は、用の美そのものであった。
 あらゆる色の中で赤色を出すのが一番難しいといわれているガラス工芸。作家はこの色を出すために、30年の歳月を費やして独自の窯を完成させていた。情熱と信念によって生まれたカシス紅は、まさに奇跡の色と呼ぶにふさわしい。

 本物は静かな場所で生まれていた。

御厨正敏(みくりやまさとし)作
「カシス紅釣鐘型デカンタ、カシス紅玉足ぐい呑み」

御厨ガラス工房 
〒856-0003 長崎県大村市野岳町1432-1 TEL.0957-55-1258