平戸港交流広場で毎日お出迎え&観光案内してくれる「じゃがたら娘」
異国の風が吹き抜けるまちをのんびり歩く。

 まずは2011年秋の開館以来、新しい観光スポットとして注目されている「平戸オランダ商館」へ向かった。どこか可愛らしい雰囲気の白亜の建物は、1639年に築造された、商館施設の中でも最も大きな倉庫を復元したもので、約400年の時を経て、同じ場所に姿を現した。当時の平戸の人々は、日本最初の洋風建築物をどんな思いで見上げたことだろう。平戸オランダ商館の設置期間は1609年からわずか33年間。しかし館内を歩くと、その短い年月の中で繁栄の歴史が刻まれてきたことを館内の品々が物語っている。
 オランダ商館を後にし、商店街の方へ歩いていくと、カラフルなオランダ衣装に身を包んだご婦人たちに「お茶どうぞ~」と声を掛けられた。聞けば、毎月第4日曜日は「平戸ゾンダーグ」を行っており、今日はちょうどその日らしい。平戸ゾンダーグとは、観光客にお茶をサービスしたり、観光案内をしたりと、まちづくりの一環で行っているボランティア活動のこと。誘われるままに休憩所に入ると「阿蘇(あそ)から来たんですよ」「私は岡山(おかやま)から」と、観光客同士が話に花を咲かせていた。
 「昔のお嬢ちゃんたちががんばってまーす」と笑うご婦人たちの中には、失礼ながらかなりお年を召している方もいらっしゃる。それでも派手な衣装を着こなし、とても楽しそうだ。その姿にこちらまで元気をいただいた。ちなみに「ゾンダーグ」とはオランダ語で「日曜日」の意味。平戸の第4日曜日は、いつも以上に面白い出会いがありそうだ。
 崎方(さきがた)町の情緒豊かなオランダ商館通りを歩いていると、思わず入りたくなる店が並んでいる。「ステンドハンカチ」という聞き慣れないネーミングに惹かれて入った店は、平戸で1番古い土産物屋だという。ステンドハンカチとは、ご主人が25年前にデザインされたステンドグラス柄のハンカチで、最近ブレイクしているそうだ。

ゾンダーグ

ステンドハンカチ

 その斜め向かいの店では、手作りの雑貨が売られていた。古布で作られた愛らしいストラップやお手玉もさることながら、築105年という建物も素晴らしい。元は海鮮問屋だったようで、当時の帳簿やそろばんが残っていた。
 通りを歩いていると、いくつもの横道があることに気が付く。1本奥に入ると、古い石塀や地元の人々が大切に守ってきた地蔵堂、樹齢400年になるかと思われる大蘇鉄(そてつ)など、どこか懐かしい風景が広がっている。平戸のまち歩きは奥が深い。

「平戸マキ人形」を作るご主人

「平戸マキ人形」

平戸オランダ商館
平戸市大久保町2477 TEL:0950-26-0636

近藤商店 <ステンドハンカチ>
平戸市崎方町854-1 TEL:0950-22-2341
篠屋(ささや)<平戸マキ人形>
平戸市崎方町842-1 TEL:0950-22-2858
うで湯
魚と温泉とおしゃべり。歩いてめぐる平戸の醍醐味

 お腹が空いた。平戸といえば、新鮮な魚介類である。地元の人に教えてもらったのは、平戸漁業協同組合の1階にある「旬鮮館(しゅんせんかん)」。大きないけ洲にはヒラメやイカなど、今朝獲(と)れたばかりの魚が泳いでいる。
 この店にはメニューがいらない。いけ洲の中を覗(のぞ)きながら「おすすめは?」と聞けば、「今日はサバかな。イカもおいしいよ」との答え。「じゃあ、それにご飯と味噌汁をつけて」。これでOKである。水揚げされた魚はその場ですぐに調理されてテーブルへと運ばれてくる。さばきたての刺身は「平戸の人はこんなにも美味(おい)しい魚を食べているのか」と悔しいくらいに旨(うま)い。漁協直売ということもあり、値段が安いのも魅力。店内ではビールを片手に、牡蠣(かき)やサザエの炭火焼きを頬(ほお)張る人の姿も見られ、どこかアウトドアな感じに気持ちが弾む。

旬鮮館

ホクホクの鯨コロッケ

 旬鮮館のすぐそばで鯨の販売店を見つけた。「鯨かつバーガー」「鯨汁」などのメニューを掲げている。江戸時代、平戸市の鯨組は日本で最大規模を誇った歴史があり、捕鯨で栄えた平戸では今でもその食文化が息づいている。せっかくなので揚げたての「鯨コロッケ」をいただいた。鯨の味が染み込んだコロッケは、まさに懐かしの味。まち歩きをしながら食べるのにちょうどいい手軽さだ。
 松浦史料博物館へと続く「歴史の道」を歩いていると、気持ちよさそうに足湯を楽しんでいる人たちに出会った。その奥では指先や腕を温めている人もいる。足湯は聞いたことあるが、「うで湯」とは珍しい。別名「美人湯」と呼ばれる平戸温泉。その名の通り、とろ~りとした湯に、先客たちと「上等のお湯だってわかるね」とうなずきあった。
 まちを歩いていると、「お茶どうぞ」「休憩所」という手書きのメッセージをいくつも見かけた。そして、実際に何度も「お茶でもどうぞ」「上がっていかんね」と声を掛けられた。観光客には温かいもてなしが心に染みる。だから、ついそこで長居をしてしまう。「お茶どうぞ」は「話していきませんか」の合図。400年前の平戸の人々も、こうして異国の人たちと交流を深めたのだろうか。地元の方たちとのおしゃべりが目的となるまち歩きはとても楽しい。

旬鮮館
平戸市宮の町655-13 TEL:0950-22-4857
平戸鯨の館 <鯨の販売店>
平戸市浦の町757 TEL:090-1192-8304
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