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水稲新品種「なつほのか」の奨励品種採用について

2017年(平成29年)8月20日

水稲は玄米が成熟する時期に高温の影響を受けると、デンプンの蓄積が阻害され、米粒が白く濁る「白系未熟粒(しろけいみじゅくりゅう)」などが発生することによって品質が低下する。本県でも、近年の温暖化の影響を受けて白系未熟粒の発生による品質低下が増え、問題となっている。

そのため、2004年度に高温耐性品種「にこまる」を奨励品種に採用し、平坦地を中心に作付けを推進している。さらに、県北の中山間地域を中心に作付けされている「あさひの夢」や「ヒノヒカリ」に替わる品種として、「にこまる」より収穫時期が早い高温耐性品種を選定し、16年度に「なつほのか」を奨励品種として採用した。

「なつほのか」は鹿児島県で育成され、16年に品種登録された新品種。「ヒノヒカリ」と比べて出穂期(しゅっすいき)で7日、成熟期で11日程度早い早生品種である。地面から穂の付け根までの長さ(稈長(かんちょう))はやや短く、耐倒伏性は同等。穂の長さ、穂の数は同等で、一つの穂当たりのもみの数はやや少ない。玄米の千粒当たりの重さ(千粒重)はやや重く、収穫量は「ヒノヒカリ」よりやや多い特性がある=表=。

玄米の外観品質は優れ、高温でも白系未熟粒の発生が低く、高温耐性に優れる。食味は「ヒノヒカリ」並みの良食味で、もみで1年間低温貯蔵するとやや硬くなるものの、食味は低下しにくい。

「なつほのか」の導入により、早生品種作付地域での収量・品質の向上が期待できる。また、収穫期が早いため、水稲収穫後に作付する麦・野菜などとの組み合わせも容易となり、水田の利用率向上が期待される。「なつほのか」は本年度まで各地域で大規模な試験栽培を行い、18年から中山間地域などを対象に一般栽培を開始する予定にしている。





 出穂期後の「なつほのか」




            「なつほのか」の品種特性

品種名 なつほのか ヒノヒカリ あさひの夢
移植期 6/6 6/16 6/16
出穂期 8/16 8/23 8/17
成熟期 9/21 10/2 9/22
稈長(cm) 80.2 82.9 72.6
穂長(cm) 19.8 19.4 21
穂数(本/㎡) 335 329 324
1穂籾数(粒) 77.3 81.8 76.9
千粒重(g) 24.8 23.4 23.3
玄米重(kg/10a) 575 547 515
品質 上の中 中の上 上の下






(農産園芸研究部門 作物研究室 主任研究員 中山美幸)