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イチゴ「ゆめのか」の間欠冷蔵処理による早進化技術

2017年(平成29年)7月16日

イチゴは春に旬を迎えるため、需要や単価が高くなるクリスマス時期に出荷するためには開花時期を早める必要がある。そこで、8月下旬に2週間ほど照明を消した冷蔵施設で苗を冷蔵する「暗黒低温処理」という技術が広く実施されている。

県内で栽培面積が拡大している品種「ゆめのか」もJAなどが所有する大型冷蔵施設を活用し、「暗黒低温処理」を行っている。だが、栽培面積の拡大によって冷蔵施設の不足が懸念されている。

こうした状況に対応するため、県農林技術開発センターでは「暗黒低温処理」の2倍量の苗を処理できる「間欠冷蔵処理」による開花の早進化技術を検証した。「間欠冷蔵処理」は、苗を2組に分け(1組を表処理、もう1組を裏処理と呼ぶ)、気温15度の冷蔵庫(暗所)で3日間冷蔵した後、次の3日間は常温の育苗圃に戻すというサイクルを2~3回繰り返す方法である。出し入れに労力がかかるため、生産者が所有するプレハブ冷蔵庫での実施が望ましい。

検証試験では、苗を三つのグループに分け、8月下旬から3日ごとに冷蔵処理と常温処理を3回繰り返す「表処理」と同じ処理を2回繰り返す「裏処理」、「暗黒低温処理」をそれぞれ実施し、9月の同じ日に植え付け、比較した。

結果は「間欠冷蔵処理」は「暗黒低温処理」と比べて収穫開始日は同等、年内収量は同等以上となった=図参照=。年内収量が同等以上となった要因は、2週間ほど冷蔵施設に入れたままの「暗黒低温処理」と比べ、「間欠冷蔵処理」は苗を3日おきに育苗圃に戻すことで光合成が行われ、苗の体力消耗が抑えられたためと推察される。

イチゴは10㌃当たり約7千本の苗を植えるのが一般的。「間欠冷蔵処理」をすれば生産者が所有するプレハブ冷蔵庫でも1坪当たり3千~4千本の苗を処理できるようになる。今後は、JAなどが所有する大型冷蔵施設と併用することで「ゆめのか」の面積拡大を実現していきたい。




    





(農産園芸研究部門 野菜研究室 研究員 松本尚之)