新聞報道

    

普通温州ミカンを長期貯蔵できる冷温定湿貯蔵システムの開発

2017年(平成29年)2月19日

県内のミカン生産者は、11月下旬以降に収穫した普通温州ミカンを翌年の春先まで土蔵貯蔵庫で貯蔵し出荷しているが、近年、冬季の気候が不安定で長期貯蔵が難しくなっている。

県農林技術開発センターは既存の貯蔵庫を利用し、3~4月の高単価時期まで品質を保持できる普通温州ミカンの長期貯蔵技術を開発した。一つは、貯蔵向きの果実を生産するために植物成長調整剤のジベレリンとジャスモメート液剤を混用してミカン樹に散布(以下GP処理)し、浮皮果の発生を軽減する技術。二つ目は、既存の貯蔵庫に設置し、貯蔵庫内を最適な温湿度環境に制御できる冷温定湿貯蔵システムだ=図参照=。二つの技術開発と、これらを組み合わせた長期貯蔵技術を現地で実証した。

その結果、GP処理をすることで浮皮などの果皮障害が減少し、出庫時の商品果率が69%程度まで向上した(無処理では34%)。新しい冷温定湿貯蔵システムの導入で、貯蔵庫内の温度と湿度の上下動が縮小。貯蔵期間中、温湿度を安定させることができた。

さらに、GP処理をしたミカンを、新たに開発した冷温定湿貯蔵システムで貯蔵した。表に示した通り3月下旬出庫時の商品果率が89%まで向上した。

今後は、普通温州ミカンよりも果皮の体質が弱く貯蔵が難しい早生温州ミカンについても、貯蔵して1月に出荷する技術を開発・実証する計画である。


    
                  冷温定湿貯蔵システムのイメージ



冷温定湿貯蔵システムの導入効果(2014年)
貯蔵法 商品果率
(%)
果皮障害発生指数
浮皮果 しなび果 へた枯れ
冷温定湿
貯蔵
89 3.1 11.9 17.7
慣行貯蔵 61 7.4 29.5 31.8
有意差




(果樹・茶研究部門 研究調整室室長 藤山正史)