新聞報道

    

刺激少なくまろやか ユウコウを使った飲む酢の開発

2015年(平成27年)1月18日

香酸かんきつ類「ユウコウ」は、長崎市周辺にのみ古くから自生している本県固有の品種。その地域には、江戸時代のかくれキリシタンの集落があったことから関連性が考えられている。外観はユズに似ているが特性は異なり、皮や果肉にほとんど苦味がなく、さわやかな香りとまろやかな酸味が特徴。スローフード協会(本部・イタリア)が世界の伝統食文化を守るため認定している「味の箱舟」にも選ばれている。

同市はユウコウの生産を振興しており、地域特産品として年間を通じて供給できる加工品の開発が期待されている。そこで、ユウコウの果実とショ糖を食酢に漬け込む「飲む酢」の製法について検討を行った。

試験では収穫後に冷凍保存したユウコウの果実を、米酢、リンゴ酢、穀物酢にそれぞれ漬け込み、食酢ごとの特性を評価。漬け込みは常温で行い、時間経過による食味・色調・香り成分の変化を調査した。

「飲む酢」製品の食味や色調は、食酢の違いによる差は小さく、時間経過による変化も同様の傾向を示した。食味は、貯蔵4週目までは酸味、渋味、苦味が低下し、その後安定。色調は漬け込み後6週目までに黄色から赤色に変化した。

香り成分については、時間経過により、かんきつ特有の香り成分d-リモネンが減少したが、花の香り成分の酢酸リナリルやα-ターピネオールなどは6週目以降も維持された。

これらの結果からユウコウを使った飲む酢の食味・色調・香りは、漬け込み後4~6週で飲み頃となることが判明した。出来上がった製品は酢の刺激が少なく風味はまろやか。そのままでも、水やお湯、炭酸などで3~5倍に薄めてもおいしい。今回の技術を用いて、県内の酢造会社がユウコウを使った「飲む玄米酢」として商品化しているので、一度ご賞味いただきたい。




    

           ユウコウの果実




  【図】時間経過による飲む酢の赤色度(a*値)の変化

    



(研究企画部門 食品加工研究室 室長 西幸子)