新聞報道

    

肉用牛の肉質自動推定プログラム 超音波画像 精度高く

2014年(平成26年)4月20日

肉用牛は食肉センターなどに出荷後、枝肉の重量やしもふりに当たる脂肪交雑などを指標として評価され、流通する。指標の中でも脂肪交雑が価格に大きく影響する。肉用牛の肥育期間は長く、特に和牛は約20ヵ月間に及ぶが、現状では生体のまま脂肪交雑などの肉の品質を正確に推定することは極めて困難である。

人の健康診断でも使われる超音波装置(エコー)を利用した測定技術が実用化されているが、人が画像を見て推定するには熟練を要し、また、定量的な検定制度も低かった。そこで、生体での肉質を客観的かつ高い精度で推定することを目的に、パソコン上で超音波画像から自動推定できるプログラムを開発したので紹介する。

自動推定プログラムは画像処理手法や統計処理手法を組み合わせたシステム。パソコン操作に慣れていない人でも画面に従って簡単に操作でき、超音波画像の読み込みから推定結果の出力まで1分程度で完了する。プログラムの推定精度を検証するため、出荷前の生体の超音波画像=写真参照=からの推定値と、出荷後の牛肉と脂肪交雑等級実測値との関係を調査したところ、両者の整合性は8割程度に達し、人が推定した結果と比べ高い精度を有していた。

現在、自動推定プログラムの製品化に向け準備を進めているが、このプログラムの特徴は、ユーザーが利用するたびにデータが蓄積され、推定精度が向上していく点にある。今後はこの特徴を生かして県内のデータを蓄積し、肉用牛の産肉生理の解明、育種改良および生産現場での技術指導などへの応用につなげるとともに、2017年に開催される第11回全国和牛能力共進会の本県代表牛選抜に利活用したいと考えている。本研究は産業技術総合研究所と佐賀県、ロジカルプロダクト社との共同研究で得られた成果である。



    

   出荷前の生体の肥育牛の超音波画像。肉質判定には、
       (a)の胸最長筋と(b)の僧帽筋の各部位を用いる











(畜産研究部門 大家畜研究室 主任研究員 橋元大介)