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長崎県ブランド大使

勝谷 誠彦

◎プロフィール
作家、コラムニスト、写真家。
1960年兵庫県生まれ。週刊誌やホームページでの辛口時評コラム、食や酒に関する紀行エッセイ、小説などを幅広く執筆するほか、テレビやラジオのコメンテーターとしても活躍。著書に『勝谷誠彦の地列車大作戦』『これ食べ!』『にっぽん蔵々紀行』『イラク生残記』『電脳血風録』『今宵もとことん、食う! 呑む! 叫ぶ!』『ニュースバカ一代』など。

大使でも内緒にしておきたい魅力
 いやはや、これほど長崎県に深入りするとは思わなかった。高校の卒業旅行ではじめて行って以来、旅のモノ書きを仕事とするまで、長崎と私の間には長い空白期があった。しかし、一度訪ねてその魅力を知るや、何かと口実を作っては行くという、ある種の依存症状態になっている。
 長崎の魅力は何といってもその多様性だ。そして多様性が生み出す、絶品の味の数々である。何しろ海岸線の長さは、北海道のそれに匹敵。壱岐も対馬も五島も長崎だと言うと、東京の人は目を丸くする。そうした、風土も文化も違うそれぞれの地域が、おいしいものを育み育てている。地で大事にされてきた味。だからこそ、長崎の味は、その地を訪れて食べるのがもっともおいしい。
 島原の城下町が私は大好きだ。中央を疎水が流れる武家町の通りを歩く。見上げれば普賢岳が煙をあげており、これほど絵になる城下町はそうはない。ここで芋から作った麺の六兵衛を食べれば、火山の麓という厳しい自然条件の中で生きてきた人々の暮らしが思い起こされる。夜は、地酒で「ガンバ料理」だ。棺桶を意味するガンバとはフグのこと。棺桶を用意してまで食いたいほどうまいという意味で、島原武士たちの意地っ張りと食い意地ぶりが伝わってきておかしい。島原の素麺もすっかり有名になってきた。「素麺なら島原だよ」と言うのが、麺食いの私の最近の知ったかぶりである。
 島巡りは、味巡りでもある。地獄炊きで知られる五島うどんだが、ここはぜひ作っている集落を訪ねたい。製麺所で食べる、さぬきうどんブームに火をつけた一人の私だが、次は五島のそうした集落で出来立ての麺を食べる、というのが密かに流行るのではないかと睨んでいる。集落によっても作っている家によっても味が違うことを知れば、あなたも五島うどん通である。
 対馬では何といってもアワビだ。ほとんど看板も出ていないような店で、とてつもないアワビを食わせるところを見つけてしまった。魚介類は何を食っても旨い。私は自分の中で全国10大寿司屋などを常に更新しているのだが、その中に対馬のあの店はいつも入っている。大使のくせに内緒めかしてすみませんねえ(笑)。
 壱岐といえば壱岐剣と呼ばれるイカが有名だが、最近では本マグロがあがることで知られている。これまたあまり教えたくない情報だ。なにしろ、博多から船で1時間で、とれたけの本マグロが食えるんだから。
 そうなのだ。大使になっても、教えたくない情報が、長崎には溢れている。それほどの素晴らしい文化や食に恵まれていることを、失礼ながら長崎の方々ご自身が、まだあまり自覚していないようにも見える。
 となれば、大使が活躍する場も少しはあるのかもしれない。外に向けてだけではなく、長崎のみなさんに、自らが住んでいる土地の素晴らしさを再発見してもらうためにも。
島原 撮影:勝谷誠彦
島原 撮影:勝谷誠彦
島原そうめん・普賢岳 撮影:勝谷誠彦
島原そうめん・普賢岳 撮影:勝谷誠彦
上五島教会 撮影:勝谷誠彦
上五島の教会 撮影:勝谷誠彦
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