Q9.どうして開門差止訴訟を提起したの?

このページを印刷する

 諫早湾では、干満の差が最大約6メートルにも及び、大潮満潮時の海面は背後の低平地よりも2から3メートルほど高くなります。また、諫早湾奥部には、ガタ土が堆積し、毎年、干潟が10メートルも前進します。その干潟は、放っておけば、背後地からの排水を阻害し、大きな水害をもたらすため、当地域は、600年以上にわたって干潟、干拓、干潟、干拓を繰り返し、約3,500ヘクタールの干拓地にまで広げてきました。(干拓の歴史【PDF:399KB】)この結果、干拓地の多くは海水面より低く、また、地形的に集中豪雨が多い本地域は高潮や洪水災害の危険性を常に背負っています。(集中豪雨と高潮被害【PDF:293KB】)

 事実、諫早湾の最大潮位の標高2.5メートルの海水面より低い住宅約800戸、土地約2,700ヘクタールは、ひとたび雨が降れば浸水するという慢性的排水不良や高潮被害に長年悩まされてきました。昭和32年の諌早大水害では、死者・行方不明併せて630名にのぼる大きな被害が発生しています。

 現在は、平成20年3月の国営諫早湾干拓事業の完成により、多くの地域住民の皆さんは災害の危険から解放され、安心して生活できるようになり、安定的な農業用水が確保された新干拓地では、入植された方々が先進的な環境にやさしい農業に意欲的に取り組まれています。諫早湾干拓地の営農[PDFファイル/1MB]背後地では用水不足や排水不良が解消され畑作が拡大するとともに(背後地の営農【PDF:140KB】)、諫早湾内では漁場の環境にあわせて、カキ、アサリの養殖がやっと軌道に乗りつつあります(諫早湾における漁業【PDF:459KB】)

 こうした中、平成22年12月6日に福岡高裁による排水門の5年間にわたる常時開放を求める判決がなされました。

 しかしながら、潮受堤防排水門の開門が行われれば、地域の防災機能が損なわれ、新干拓地や背後地農業の基盤が崩壊し、諫早湾内の漁業に甚大な影響や被害をもたらすことが危惧されます。

 このため、地元、県、市が連携して国に対して再三にわたり地域の実情と地元の考えを説明し、最高裁判所へ上告し、開門しないよう要請してきたところです。それにもかかわらず、国は、実際に影響・被害を受ける地域住民に一遍の説明もないまま、具体的な理由も示さず、さらには被害を回避する実現可能な対策も示すことなく、上告放棄、開門受け入れを表明し、同年12月20日の上告期限の経過により判決が確定してしまいました。

 このようなことから、低平地の住民、地元の農業者、漁業者約350名の方々が、各人の権利利益を守るとともに、地域の安全・安心と生活の基盤を守るため、やむにやまれず開門の差し止めを求める訴訟を提訴されました。開門差止訴訟[PDFファイル/6KB]

 財団法人長崎県農業振興公社も、マイナス1メートルに管理され、淡水化した調整池による用排水を完備した農地を前提に国から土地の所有権を取得し、入植者に農地を貸し出しており、仮に開門されますと、この前提が大きく崩れることになるため、やむを得ず開門による入植者の営農活動への支障や農地、農作物等の被害を絶対に出させないために提訴に至ったものです。

 この訴訟は、平成29年4月17日、長崎地裁による国に開門の差し止めを命じる判決がなされ、その後、令和元年6月の最高裁決定によって確定しています。

 開門により直接被害を受けるのは地域の住民であります。県としては、決して地元に被害が及ぶことがないよう、開門問題に関して、国に対して開門しない前提での有明海再生をお願いしているところであり、今後も諫早湾周辺地域の実情を正確に県内外の皆様にお知らせしていかなければならないと考えています。

このページの掲載元

  • 諫早湾干拓課
  • 郵便番号 850-8570 
    長崎県長崎市尾上町3番1号
  • 電話番号 095-895-2051
  • ファックス番号 095-895-2595