1.フッ化物一般

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Q1.フッ化物とはどのようなものですか?

A1.
フッ化物は自然の中に広く分布している元素の1つです。地殻にある約90の元素中、多い方から13番目で豊富に含まれています。フッ化物は、元素単独では存在せず、螢石、水晶石、リン鉱石、などとして存在します。地中はもとより海水、河川水、植物、動物などすべてに微量ながら含まれており、私たちが食べたり飲んだりするものの中にも、量は異なるものの、必ずといっていいほど含まれています。また、フッ化物は私たちの日常生活のなかでも工業製品の一部として、さまざまな形で役に立っています。これらの工業製品の一部としての物質はフッ化物を含んだ有機化合物であり、むし歯予防に用いられるフッ化ナトリウムなどのフッ化物化合物とは、全く性質が異なります。

表1 食品のフッ化物量

フッ化物含有物質

フッ化物含有量(ppm)

地中

 280

1.3

紅茶

0.5-1.0

緑茶

0.1-0.7

ビール

0.8

砂糖

1.7-5.6

25.9

みそ

0.9-11.7

ミカン

0.1-0.3

リンゴ

0.2-0.8

ニンジン

0.5

大根

0.7-1.9

2

エビ

4.9

いわし

8-19.2

1.5-1.7

海草

2.3-14.3

※ppmとは、100万分の1を示す単位。
つまり1kg中に1mgのフッ化物が含まれている場合、その濃度は1ppmとなる。

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Q2.フッ化物によるむし歯予防はいつごろから始まったのですか?

A2.
私たちが使っている飲料水のなかににも、微量ながらフッ化物が含まれていますが、天然に適量(約1ppm)のフッ化物を含んだ飲料水として使っていた人々にむし歯が少なかったという事実の発見からフッ化物によるむし歯予防が始まりました。今世紀初め頃アメリカで同じ水源の水を飲んでいる地域の人々に集団的に発生する斑状歯(歯牙フッ化物症)が発見されました。その原因は、飲料水中に過量に含まれるフッ化物のためでした。同時にこれらの地域では他の地域に比べてむし歯が少ないという事実も発見されました。その後、広範囲な調査で適量のフッ化物が飲料水中に含まれている場合斑状歯(歯牙フッ化物症)の発生もなく、かつ高いむし歯予防効果が得られていることが分かりました。適量のフッ化物を含んでいる飲料水を飲んでいる地域の住人の健康状態をあらゆる角度から検討したが異常は認められませんでした。つまり、適量のフッ化物は人体になんら悪影響を及ぼすことなくむし歯予防にとって極めて有効に働くことが確認されたのであります。

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Q3.フッ化物はどうしてむし歯予防に有効なのですか。

A3.
フッ化物がむし歯予防に有効な理由として、次のようなはたらきがあるからです。
(1)歯の構造を強くする。(歯質の改善)
フッ化物が歯の一番表層のエナメル質に作用し、エナメル質の結晶構造を改善します。
エナメル質の構造はハイドロキシアパタイトという結晶構造でできています。この結晶は、むし歯菌が産出する酸に対して脆く、溶けてしまいます。(脱灰)フッ化物が作用すると、ハイドロキシアパタイトがフルオロアパタイトという極めて酸に対して溶けにくい結晶構造となり、歯の表面が丈夫になります。

(2)歯の表面を修復する。(再石灰化)
むし歯になりかかった(カルシウムが溶けだすこと)エナメル質に作用し、その部分に再びカルシウム等が沈着して歯の表面を修復します。(再石灰化)この修復はフッ素が歯の表面にたくさんあると(歯の表面の濃度が高くなると)唾液中のカルシウム等を取り込む作用が働き、再石灰化が進行します。また、再石灰化が進行するので脱灰するのが抑制されます。

(3)その他のフッ化物のはたらき
フッ化物は歯質を強くしたり、修復したりする作用以外にもむし歯菌の酸を産生するのを抑制したり、歯垢(細菌の塊)の形成を抑制する働きがあります。

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Q4.自然のフッ化物とむし歯予防に使うフッ化物は同じものですか。また、工業用のフッ化物とどこがちがうのですか?

A4.
むし歯予防のフッ化物には、普通フッ化ナトリウム(NaF)が使われます。これは、水に溶けるとイオン化して存在します。このフッ化ナトリウムは、螢石から精製されてます。お茶等含まれているフッ化物は、フッ化物イオンとして存在し、性質は全く同じものです。
また、工業用のフッ化物としては、フッ化水素(HF)という強い酸性をもった化合物があります。このフッ化物は他の物質等と強い反応をします。
このようにフッ化物でも違った種類の化合物なので、その性質は全く違うものとなります。したがって、むし歯予防用のフッ化物は、自然界で存在しているフッ化物と同じで、工業用のフッ化物とは、全く別物です。

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Q5.フッ化物は必須栄養素ですか?

A5.
量のフッ化物は、むし歯に対する抵抗性のある歯をつくるとともに、正常の骨格を維持するために必要とされています。
世界保健機構(WHO)や食糧農業機関(FAO)、アメリカ合衆国食品医薬品局 (FDA)など多くの専門機関では、フッ化物を身体に欠かすことのできない必須栄養素であるとしています。
また、アメリカ合衆国全国科学委員会は、フッ化物の1日所要量を成人で3mgとしています。

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Q6.フッ化物は、身体にどのように摂り入れられ、また、どのように利用されるのでしょうか?

A6.
食物から摂取したフッ化物は、体の中に入ると胃や腸(主に胃)から吸収されます。その大部分(子どもで吸収された内の60-90%、成人で約90%)はそのまま腎臓から膀胱に移行し、24時間以内に尿の中に排泄され体外へ出ます。一方、排泄されなかったフッ化物はさまざまな臓器、器官で利用されますが、主にフッ化物の必要性の高い骨、歯などの硬組織に蓄えられます。成長期の子どもは、代謝が著しいので成人よりもフッ化物を蓄える割合が多くなっています。
しかし、一度蓄えられたフッ化物は、永久にとどまっているわけではなく、再び代謝され移動・排泄されます。
なお、水に溶けているフッ化物はそのほとんどは吸収されますが、小魚など固形物に含まれているフッ化物の吸収はかなり悪く、吸収されない部分は糞の中に排泄されます。

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