面ながの顔には,弓なりの眉や波うつ上瞼,そして,静かな口もとなど古式さのなかに豊かな表情がみえる。体躯は痩身(そうしん)で、長い大きな耳のうしろからの垂髪(すいはつ)は、肩にそって可愛らしくかかっている。腰を少し右にひねって立ち、天衣(てんね)も瓔珞(ようらく)も、裳(も)のひだも、体の捻りにそってゆれている。小品ながら,そのような細部にわたる配慮は心にくいほどで,金銅仏制作の最盛期に向う時期のものであることがうなずかれる。台座も古式で,蓮肉部(れんにくぶ)を少しせり出し,立ち上りのつよい素弁(そべん)の反花(かえりばな)もふっくらと蓮台をつつみ,像様(ぞうよう)のやわらかさとよく調和している。その制作は7世紀に遡(さかのぼ)り、朝鮮半島三国時代の尊像として,朝鮮半島美術史上,ひいてはわが国上代彫刻史を考える上にも貴重な金銅仏といえる。なお、鋳造はろう型によって本体と台座を一鋳。像高13.6㎝、総高17.4㎝。