里田原遺跡は、平戸市田平町に所在し、盆地の平野と周囲の丘陵傾斜面に立地する。この青銅鏡は、里田原遺跡の東南端にある弥生時代の墓地(荻の下地区)で、平成12(2000)年調査で検出された弥生時代中期初頭の甕棺に、小壺(城ノ越式)と共に副葬されていた多鈕細文鏡である。多鈕細文鏡は、朝鮮半島で製作された青銅鏡で、半円形断面の鏡縁(蒲鉾縁)をなし、背面に二つから三つの鈕をもち、幾何学的な細かい文様を施す凹面鏡である。本例は、三つの鈕をもった完形品であり、径8.9cmの小形の部類に属する。わが国に弥生時代前期末から中期後半に流入した多鈕細文鏡は首長などの威信具や祭祀具として用いられたが、本例は当該地域におけるクニ形成期における社会の状況を表す資料として極めて重要である。
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