田平熊野神社に伝わる一群の懸仏である。員数は20面で、懸仏光背残欠1つを付す。うち一面の阿弥陀如来坐像の懸仏の裏面板には、「願主沙弥□□(道一)/并藤原□□(二子)/奉懸 御正体 一躰/右志為現當二世悉圓満□□(而巳)/正應四年三月廿八日敬白」と墨書があり、正応4(1291)年という具体的な制作年代がわかる。
懸仏では一般的にみられない地蔵菩薩坐像、不動明王坐像、文殊・普賢両菩薩坐像が交じることから、熊野十二所権現の本地仏であることが推察される。
本懸仏群は、造形的にも優れた作品群で、畿内周辺からもたらされたと考えられる。制作年代の判明する基準作を含む点でも大きな価値を有するととに、北部九州における仏教文化の受容を考える上でも、重要な資料であると考えられる。
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